答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

憲法演習ノート 21.パパには長生きしてほしかった(泣)

 

 

第1 問1

1 民法900条4号の嫡出子と婚外子法定相続分に差異があったが、これが合理的区別に当たらず、「差別」であるとして、憲法14条1項の平等権に反するものとして、民法900条4号は違憲である。

2 民法900条4号は、それが制定された当時の時代背景は、日本の家制度を重視し、法定婚を経て戸籍上家族として認められる者を、事実婚を経て実質上の家族として認められる者よりも優越して相続分を得ることが出来るという規定である。

 しかし、そもそも同じ父親を持つ子供を嫡出子と婚外子に分け、法定相続分に差異を設けること、そて、現代の多様化した社会情勢の中法律婚に加えて、事実婚する男女が増えているという状況を加味すると、民法900条4号の差異はもはや合理的区別とはいえず、差別に当たる。

3 したがって、最高裁民法900条4号は憲法14条1項に反し違憲であると判示した。

4 そして、これによって、民法900条4項は違憲であるから、同条項に従って行われてきた遺産分割も違法・無効である。

 また、2001年7月当時には、民法900条4号は憲法に違反する法律として無効であった。

 しかし、これまでに行われてきた遺産分割のすべてが違法であり、判例変更を必要とするものではなく、最終的には遺産分割は当事者間の合意等により、確定的になったのであるから、このような法律関係にまで影響を及ぼすことは、法的安定性を欠き、相当でない。

5 したがって、本判決の影響が及ぶのは、民法900条4号が改正され、それが施行されたことによってそれ以降の遺産分割に及ぶことになる。

第2 問2

1 最高裁の判示に対して、本件遺産分割が協議を終えたのは2013年8月20日であり、少なくとも2001年7月当時には民法900条4号が違憲状態であったなら、本件遺産分割は違憲違法な法律に従ってなされたもので無効となるべきである

 そして、本判決の遡及効が本件遺産分割時には及ぶと反論することが考えられるこれについて、以下の私見述べる

2 違憲判決の効力は訴訟当事者にのみ及び、一般的遡及効はないと解されている。

 本件判決は、遅くとも訴訟の対象となった相続が開始された「2001年7月当時において」、当該民法規定は違憲であったと判示した。

 しかし、同判決までの約12年間に本件規定の合憲性を前提としてなされた多くの遺産分割にまで違憲判決の効力を及ぼすと、それこそ「著しく法的安定性を害することになる」。

 そこで、同判決も、既に「確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない」、という形で遡及効を限定している。

3 しかし、本件遺産分割は本判決ないし本件決定が判示される約2週間前になされたものであり、本件決定が2週間後に出る可能性があることを知っていたのであるのなら、本件遺産分割に及ばなかったであろうことは予想される。

 したがって、錯誤無効の主張をしうる。 

 そうすると、「本件遺産分割が確定的なものとなった法律関係」はいえず、本件遺産分割には、本件決定の効力が及びうる。

4 したがって、本件違憲判決の効力は本件遺産分割に及び、違憲違法となり、無効となる。

 

                                                                      以上(1326字)

 

※これにて、『憲法演習ノート』の答案例もすべて掲載完了となりました。ここまで日にちがかかるとは思いませんでしたが、なんにせよ完走できてなによりです。

民法改正により、条文が変わっている部分があるかもしれませんが、あくまで本設問が作られた当時の条文に合わせて解答しています。

※久しぶりの更新になってしまいました。自分の勉強のためにもなにか新しく演習書の答案でも書こうかなと思ったり思わなかったり。

 

憲法演習ノート 20.総理への階段

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 まず、国会が内閣の解散権について制限を加えることができるかについては、できると解する。

 なぜなら、解散は国民に対して内閣が信を問う制度であるから、それにふさわしい理由存在しなければならないし、衆議院で内閣の重要案件が否決され、または審議未了になった場合以外の解散は不当であるからである

2 総理大臣が自らの法案を通すために、解散を盾にすることは民に対して信を問う制度であることを鑑みると、その解散に至るさわしい理由はなく不当であるといえる。また、参議院において、法律案や予算等が否決されたことを理由に解散をすることはできない。

3 したがって、解散権について制限を加える立法も可能である。

第2 問2

1 衆議院を解散する行為自体は天皇の国事行為である(7条3号)が、国政権能を有しない天皇がその主体的意思で解散を決定する余地はない。

 そのため、内閣が衆議院を解散する実質的に決定する権限を有し、「助言と承認」を通じてこれを行使できるに過ぎないから、69条所定の場合のほかに、内閣は衆議院を解散することはできない。

2 前述の通り、解散は国民に対して内閣が信を問う制度である。そして、衆議院は民意が反映された議員で構成されている。

 そうすると民意が反映された議会において、その構成員の過半数超える55%以上が解散に賛成している以上は、これを内閣が無視することはできず、議会民主政の元民意の反映を十分に考慮しなければならないから、このような場合に内閣は衆議院を解散しなければならないとの立法も可能である。

 

以上(675字)

 

どうも、お久しぶりの更新になってしまいました。

弊ローはオンライン授業はそれほどやっておらず、レポート課題が目下の出席確認ならびに成績対象になるようです。

まあ、結構履修している単位が多くてレポート出してない科目もありますが笑

このご時世、少なくとも前期の期末試験は従来の方式はとることはできないだろうなと思っています。

最近の関心は保険法と不正競争防止法で、それについての講義だったりレポートを書いたりしているので、いつかブログに載せてみようと思っています。

予備試験も司法試験も今年はできそうにありませんよね・・・。

来年、一つ上の世代と一緒に司法試験を受けるのはイヤですが、自分の勉強をしていくしかありませんね。

 

では、また。

令和元年12月会社法改正について①

0 これまで、本ブログは主に憲法の答案を掲載してきた。筆者は非常に多方向へ好奇心が向いてしまう傾向にあり、関心のある法律だけでも金商法、独禁法、知的財産法、刑事法、憲法etc... と、定まっていない。

 そもそも、本ブログは筆者がリサーチペーパーを書くために、日常的に疑問に思ったこと・関心のある論文を読んでその骨子をまとめる等のために開設したものである。

 そこで、金商法にゆかり深い会社法について、少し書きたいと思った。

 

 会社法の改正が令和元年12月に成立し、株主総会、取締役、社債、株式交付等非常に広範な範囲に改正の手が及んでいる。

 この令和元年会社法改正を語る前に、平成26年改正についても触れておきたい(機関・資金調達の部分に限る。)。

平成26年改正において、327条の2が新設された。それは、社外取締役を置いていない場合の理由の開示である。

(1)これは、コーポレートガバナンスの重要性が語られるようになって、それを元にアメリカに倣って導入された。もっとも、これは社外監査役を設置することを義務付けたものではない。

 この条文自体は、イギリスのコーポレートガバナンス・コード等で採用されていた comply or explain rule にならった規定である。

 もっとも、対象となるのは監査役設置会社であって金商法24条1項により有価証券報告書を提出しなければならない会社である。(※1)

(2)ここでいう理由の説明は、社外取締役を置かないことの理由や億必要がない理由ではなく、置くことが相当でない理由である。すなわち、社外取締役を置くことがかえって会社にマイナスになるという理由である。

 詳細は省くが、相当でない理由かどうかは究極的には株主の判断によることになる。

 現在の実務では、この改正を受けて、社外取締役を設置する公開会社は急増し、上場企業に限れば社外取締役を1名も選任していない会社はほとんど見られない。

 そうであれば、いっそのこと義務付けしてもいいのではないかと、令和元年の改正では検討すべき事項として挙げられていた。

※1 このように対象が限定されたのは、公開会社で大会社である株式会社は、類型的に見て株主構成が頻繁に変動することや会社の規模に鑑みた影響力の大きさから、社外取締役による業務執行者に対する監督の必要性が高く、また、その会社の規模から、社外取締役の人材確保に伴うコストを負担しうると考えられ、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない株式会社は、類型的に、不特定多数の株主が存在する可能性が高いことから、社外取締役による業務執行者に対する監督の必要性がとくに高いと考えられたためである。坂本三郎編著『一問一答平成26年改正会社法』〔第2版〕(商事法務、2015年)

 

2 次に、資金調達に関して26年改正で定められた重要な点を軽く紹介する。

 (1)支配株主の変動を伴う募集株式の割当て

 募集株式の割当てまたは総株引受契約の締結にあたっては、206条の2が新設された。これは、ある程度の反対株主がいる場合に、あえて総会決議を要求することは会社に負担となりひいては株主の利益を損ない、資金調達の機動性を害しないようにするためである。

(2)出資の履行の仮装

 これについては、52条の2ならびに102条の2が新設され、出資の履行を仮装した者は、払込期日や払込期間が経過した後でも、引き続き出資を履行する義務を負う。これは現物出資の場合も同様である。

 このような規定は、募集株式の発行における仮装払込みの場合(213条の2)、新株予約権にかかる払込み等が仮装された場合(286条の2286条の3)にも見られる。

 

3 以上で見てきた以外にも吸収分割・事業譲渡等の組織再編についても多数の改正が行われているが、ここでは触れない。

 また、文字数との関係で、平成29年民法改正に伴う会社法改正については、【令和元年12月会社法改正について②】以降で述べていこうと思う。

 

 なお、これまでの記述は、近藤光男+志谷匡史著『改正株式会社法Ⅴ』(弘文堂、2020年)を参照、引用している。

 

                                           (1706字)

憲法演習ノート 19.タヌキな裁判官

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Xに対する監置決定(法秩法2条1項)により、Xの公平・迅速な公開裁判を受ける権利(37条1項)を制約し、違憲違法とならないか。

2 37条1項は、刑事被告人に対して、「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」を保障している。法は既に32条で万人に対し「裁判所において裁判を受ける権利」を保障しているが、37条1項が改めて「裁判を受ける権利」に言及したのは、刑事被告人に特有の諸問題について、刑事被告人の手続的権利を強化するという観点から、「公平」「迅速」「公開」の3つの特別な保障を与えたものである。そうすると、このような権利は、刑事被告人にとって非常に重要な権利である。

しかし、裁判所で裁判を受ける際には、公共の福祉による制約を受けることがある。具体的には、訴訟の進行に著しく遅延や妨害を及ぼすことがあり、訴訟を続行することが困難であるような場合には例外的に刑事被告人の権利を制約することもやむを得ない。

本問では、Xは「私は無罪です。検察官の起訴は、私たちの信教の自由を侵害しており、これこそは真の論点です。タヌキに憑依されて、私たちに偏見をもっているあなたたち裁判員に、私を裁くことは不正であり、許しません。裁判官による裁判を求めます」と被告人による供述を求められていないにもかかわらず、大声で主張し、審理の進行を妨げている。して、裁判官の制止にもかかわらず、Xは自らの主張を繰り返したため、Xを拘束しなければ、訴訟を続行することが困難であるといえ、監置決定は37条1項に反し、違憲とはいえない。

2 そして、適用違憲ともみられるような事情もない。

3 したがって、本件監置決定は合憲である。

第2 問2

1 Eによる秘密面会の拒否が、Xの弁護人依頼権(34条、37条3項)を侵害し、違憲とならないか。

2 憲法は34条と37条3項において、弁護人依頼権を規定している。両規定により、被疑者に対して身体が拘束される場合に、必ず、被告人に対してはいかなる場合でも弁護人に依頼する権利が保障される。「資格を有する」弁護人(37条3項)とは法律の専門家である弁護士のことを指す。

刑事手続において、被疑者・被告人は常に捜査機関・訴追機関と対峙しなければならないが、通常前者は法律の素人であることを思うと、弁護士の援助があって初めて後者との実質的な対等性が確保され、公平で適正な刑事手続が実現すると考えなければならない。

しかし、いかなる場面において面会を認めなければならないとなると、捜査機関の捜査に著しい遅延を生じるおそれがあり、特に秘密面会については、その施設が整っていない場合や、被告人の精神状態を加味して、職員を立ち合わせることで面会を認める必要がある場合があるといえる

3 そして、死刑確定者にはその精神状況が安定しているとは言い切れないから、職員の立会いのもと面会を認めることが定められている(刑事収容施設法121条)

4 したがって、同条により、職員の立会いの下面会を認めることは、Xの弁護人依頼権を侵害するものでなく、合憲である。

第3 問3

1 裁判員の関与する裁判体による裁判でXが有罪とされたことについて、Xの「公平な…裁判を受ける権利」(37条1項)を制約するものでないか。

2 下級裁判所の裁判官は最高裁判所の指名した名簿によって、内閣に任命された者で構成される(80条1項)このように憲法上は、刑事裁判の担い手は、基本的に裁判官とされているものの、憲法は国民の司法参加を許容しており、これを採用する場合には、適正な刑事裁判を実現するために諸原則が確保されている限り、その内容の立法政策に委ねている。

裁判員制度の仕組みを考慮すれば、公平な「裁判所」における法と証拠に基づく適正な裁判が行われること(31条32条、37条1項)は制度的に保障されており、憲法が定める刑事裁判の諸原則を確保する上での支障はなく、80条1項にも違反しない。

3 したがって、裁判員の関与する裁判体による裁判でXが有罪とされたことについて、Xの「公平な…裁判を受ける権利」(37条1項)を制約するものでなく、合憲である。

 

以上(1726字)

憲法演習ノート 18.天国に行ったワンコ

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Xは、Aによる立入調査を拒否し続け、Aを立ち入らせなかったことが、新法37条1項4号の規定に反し、新法96条3項に基づき起訴され、加えて、虐殺動物死体の届出義務違反の罪(新法84条、96条5項)でも起訴されている。

 しかし、新法96条は、35条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として、「その効力を有しない」98条1項)。したがって、新法96条に基づく本件起訴理由は法・無効な検査であるから、これを拒んだとしても新法37条1項4号の構成要件に該当しないから、「被告事件について犯罪の証明がない」(刑事訴訟法336条)。また、新法84条も、38条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として「その効力を有しない」。                   

 したがって、「被告事件が罪とならない」から、Xは「無罪」(刑事訴訟法336条)である。   以下、詳述する。 

2 立入調査拒否について

(1)35条1項は、「何人も、その住居、書類及び所持品については、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」と規定し、同条2項は「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する格別の令状により、これを行ふ」と規定しているところ、その趣旨は、捜索、押収等にあたって、事前の司法審査を要求することによって、個人の重要な法益である、住居権、財産権、プライバシー等に十分に保護することにあるから、刑事手続以外にもその保障が及ぶ場合があると解するべきである。

 すなわち、強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する行政手続の場合には、「令状」が必要となるとかいするのがそうとうである。

(2)新法96条3項が定める罰則により、同37条1項各号に基づく処分を受忍するよう強制されるのであるから、新法37条1項に基づく処分は、強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する行政手続である。したがって、新法37条1項に基づく処分には「令状」が必要となるところ、同条は「令状」なしに処分できることを認めているから、35条1項に違反し、「この憲法…の条規に反する法律」として、「その効力を有しない」。

 したがって、法37条1項に基づく立入調査は違法無効な調査であって、これを拒んだとしても新法96条3項の構成要件には該当しないから、「被告事件について犯罪の証明がない」。

3 届出義務違反について

(1)38条1項は、「何人も、事故に不利益な供述を強要されない」と規定しており、何人も自己が刑事上の責任に問われるおそれがある事項について供述を強要されないことを保障したものである。そして、同条が強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する行政手続法にも適用されることは前述のとおりである。

(2)新法96条に基づく届出義務が強制されることは、「発見に至った経緯」を供述しなければならない。そうすると、強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する義務であるといえる。したがって、新法84条は、委員会により、刑事訴追を受けるおそれのある事項について供述を強要するのを許容するものであるとして、38条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として「その効力を有しない」

 よって、「被告事件が罪とならない」。

4 以上より、Xは「無罪」である。

第2 問2 検察官の反論

1 立入調査拒否について

(1)35条1項は刑事手続のみに関する規定であって、行政手続にはその保障が及ばないものと解する。したがって、新法37条1項に基づく立入調査に「令状」は不要であり、同条は35条1項に違反するものではない。

(2)仮に行政手続にも38条1項の保障が及んでいるとしても、新法37条1項に基づく調査に35条1項の保障は及ばないから、同調査に「令状」は不要であり、同条は35条1項に違反しない。

 そして、Xが新法371に基づく調査を拒んだことに争いはないから、Xの行為は新法96条3項に該当する。

2  届出義務違反について

(1)上記の通り、35条同様、38条1項も刑事手続のみに関する規定であって、行政手続にはその保障が及ばないと解する。したがって、新法84条は、38条1項に違反するものではない。

(2)仮に行政手続にも35条1項の保障が及んでいるとしても、新法84に基づく届出義務38条1項の保障は及ばず同届出義は38条1項に違反しない。

(3)そして、Xが届出に違反したことについては争いがないから、Xの行為は新法84条に該当する。

3 結論

 以上より、「犯罪の証明があった」(刑事訴訟法333条1項認められるから、Xは有罪である。

第3 問2 私見

1 立入調査拒否について

(1)まず、行政手続に35条1項の保障が及ぶかが問題となる。

 35条1項は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下おこなわれるべきであることを保障した趣旨であるが、同項が刑事手続について規定したのでは、近代消極国家において刑罰権が国民の権利・自由に対する最大の脅威であったからにすぎない。しかし、今日では福祉国家理念の下、国家が国民生活に対し多種多様な形でかかわりを持つようになってきており、行政権の行使による国民の権利・自由の侵害の危険性が大きくなっている。

 したがって、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に35条1項による保障の枠外にあると判断することは相当でない。

 もっとも、行政手続は、刑事手続との性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様である。そこで、当該強制が刑事責任追及を目的とする手続か、刑事責任追及のための資料収集の作用を一般的に有しているか否か、強制の態様程度いかん、当該強制の目的は何か、目的と手段との均衡の有無等を考慮して、個別具体的に適用の有無を判断すべきである。

(2)新法37条は、委員会が、事件について必要な調査をするために物件を検査っすることを定めている。さらに同条4項は帳簿書類等の検査であるから、刑事責任追及のための資料収集の作用を一般的に有しており、刑事責任追及を目的とする手続ではない。

 しかし、動物愛護委員会(ごとき)に、住居にまで立ち入って検査を強制させることはあまりにも不均衡、不合理である。

 したがって、このような場合には35条1項による保障が行政手続にも及びうる

以上から、立入調査については「令状」が必要であり、無令状による立入調査をすることは35条1項に違反し、無効である。

(3)したがって、法37条1項に基づく立入調査は違法・無効な調査であって、これを拒んだとしても新法96条3項の構成要件には該当しないから、「被告事件について犯罪の証明がない」。

2 届出義務違反について

(1)上記1同様に、行政手続に38条1項の保障が及ぶかが問題となる。

 38条1項の法意が、何人も刑事上の責任を問われるおそれがある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解されるべきところ、同条の保障は、純然たる刑事手続においてばかりでなく、実質上、刑事責任追及のたの資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的有する手続には、等しく及ぶものと解するのを相当とする。

(2)新法84条による届出義務は、動物取扱業者において、動物愛護の精神の下、動物に危害を与えさせることを予防せしめることにある。しかし、虐殺動物死体等を発見した場合において、届出を義務づけること、たとえ発見者が虐殺を行なった者でないとしても、犯人を発見するために必要な資料を収集する、すなわち、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続であるといえる。

 したがって、本件においては届出義務をするに当たり、38条1項の保障が及ぶから、新法84条は、委員会により、刑事訴追を受けるおそれのある事項について供述を強要するのを許容するものであるとして、38条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として「その効力を有しない」。よって、「被告事件が罪とならない」。

3 結論

 以上より、Xは「無罪」である。

 

                                          以上(3452字)

 

※みんな大好き川崎民商事件ですねー。まあ私が個人的に好きなだけかもしれませんが笑

※ここらへんになってくると憲法行政法の交錯が著しくなってきますね。

 

※『憲法演習ノート』の答案例も残り少なくなってきました。友人に貸していた『憲法演習ノート』の本も返ってきましたし、なんだか哀愁じみたものを感じてます。

憲法演習ノート 17.投票させないほうがマシ⁉︎

 

 

第1 問1(以下憲法は法令名省略)

1 まず、Xは最高裁判所裁判官国民審査法(以下、「法」という)8条により、在外日本国民には投票権(15条1項)が与えてられておらず、法は15条1項79条2項及び3項に反し、違憲違法であるから、Xとしては、が違法であることの確認の訴え(行訴法4条後段)及び、違憲違法なを放置したことにより、Xに精神的損害を「違法」に与えたとして国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求訴訟を提起する。

2 法が最高裁判所裁判官の国民審査に当たり、在外日本国民に投票権の行使を認めていないから、これは15条1項及び79条2項及び3項に基づくXの投票権を制約する。

 また、15条1項が「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」と投票権保障していることに加え、79条2項により最高裁判所裁判権の任命については国民の審査」に付するとしているから、「国民」であるXにこれらの権利は認められる。 

3 そして、日本に在住している国民にのみ投票権を認めることは、在外日本国民を差別しており、平等権に反する(14条1項)。

4 そもそも最高裁判所裁判官国民審査衆議院議員総選挙と同日に行われることから、国民が民主政に参加する機会と同時に行われていることから鑑みて、同国民審査に当たって投票する権利は、国民が司法権の最高機関である最高裁判所裁判官の適性を判断することについて意見を述べる機会でもあり、これは国民の民主政に参加する権利として重要な保障が及ぶべき権利であるということができる。そして、これを在外日本国民に認めていない法8条は強力な制限であるといえる。

5 したがって、「国民」投票権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められるような事由がなければならないというべきである。そして、そのような制限をすることなしに国民審査の公正を確保しつつ投票権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り、上記のやむを得ない事由があるといえず、このような事由なしに国民の投票権の制限することは、投票権の侵害といわざるを得ない。

6 本件では、1996年に日弁連から政府に対して、「最高裁所裁判官の国民審査法も所要の改正をするよう求める」という要望書を提出している。

 しかし、このような要望書に沿った改正はなされず、2005年にも最高裁で検討されたが国会に法案を提出するにはらなかった。そうすると、1996年から2015年の約20年間の長きに及ぶ期間の間、在外国民の投票権の行使について何らの制度を創設しないまま放置し、本件国民審査に当たり在外国民の投票を認めないことについて、やむを得ない事由があったということはできない。

7 以上より、法8条はXの投票権を侵害し違憲違法である。

第2 問2

1 被告の反論

(1)確認訴訟の提起に関しては過去の公法上の法律関係の確認であるから、確認の利益が認められず不適法却下である。

(2)国家賠償法1条1項の「違法」に関しては公務員が職務を行うに当たり必要な注意義務を果たさなかったことによるものであるかどうかを基準に行うべきである。

(3)国政選挙と国民審査の議会民主制上における意義の重要性は明らかに異なっているから国民審査の意見審査基準には緩やかな基準を用いるべきである。

(4)白紙を用意すれば足りる国政選挙と異なり、国民審査には裁判官の氏名を印刷した用紙などを用意しなければならず、問題文中にある通り、郵送のための期日が不足する。

2 私見

(1)国民審査の意見審査基準については、厳格な基準を用いるべきである。

なぜなら、国民審査と国政選挙の議会民主制上における意義の重要度が違うとはいえ、司法の最高機関である最高裁判所はいわば司法審査を行う最終的な機関であり、国民にとっては自己に不利益な判決がなされた場合でも、それについての不服をそれ以上申し立てることができない。とすれば、最高裁判所裁判官自らが適性が無いと思う裁判官の罷免をさせるために投票する権利は、国政選挙において、民意を反映させることと同等の価値があるといえる。

 そうすると、このような機会を与えない法8条の制約は極めて強度のものであり、厳格な基準が妥当であるからである。

(2)これについての当てはめは第1の6で述べた通りである。して、郵送の期日が足りないという被告の反論に対しても、法16条が展示投票の場合は罷免を可とする裁判官の氏名を記入することができるとしているから、在外国民についても、最高裁判所のホームページで国民審査の期日を発表し、それに間に合うよう氏名を記入した投票用紙を郵送させるなどの方式を採用することはできる。したがって、国民審査に当たり在外国民の投票を認めないことについて、やむを得ない事由があったということはできない。

 よって、法8条は違憲である。

(3)Xのように在外国民が国民審査において投票権を行使する権利を有することの確認請求を行えば、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法であり、次回の国民審査において、在外国民名簿に登録されることに基づいて投票をすることができる地位にあるべきであることを確認する利益があるから、不適法却下とはならない。

(4)国会が長期に渡り、在外国民の投票を認めれるための立法措置を行なってこなかったことは、在外国民の投票権を確保するために様々な議論がされてきている(問題文中の政府の見解や、2005年の最高裁判決を機にした再検討)が、その制度確立の難しさから、いまだに立法がなされていないだけで、無闇に立法措置をせずに放置してきたわけではない。

 したがって、国家賠償請求訴訟については提起することはできない。

 

以上(2395字)

 

※反論はピンポイントで書いたほうがあとあと自分の首を絞めることにならずよきです。

※現行の司法試験ではリーガルオピニオン型の出題なので、これまでのように3者間で書くことはないですが、これまでと考え方は変わりませんので、反論はピンポイントに書いたほうがスムーズでよいかもしれませんね。

※久しぶりに憲法の答案を書くと、感覚が鈍っていてイケませんね笑

憲法演習ノート 16.車を借りると生活保護は廃止❔

 

 

第1問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Xの主張について、Bの保護廃止決定(以下、「本件決定」という)が生活保護法4条1項の適用を誤って適用し、これに基づいてなされ、Xの生存権(25条1項)を侵害し違憲であると主張する。

(1) まず、Xは夫と離婚した後に、Xと4人の子どもの生活を支えるため、パートに出ているがとても世帯を支えることは困難であり、生活保護を受けていた。

 生存権は、法律による具体化を待って初めて裁判規範たり得る抽象的権利であるが、生活保護法は1条において目的を定め、国民に対して生存権を保障する25条1項の趣旨を具体化したものといえるから、同法生存権の具体化立法といえる。したがって、同法の定める生活保護を受ける権利は、生存権の一環として保障される。

(2) また、生存権は、まさに「生きる権利」そのものであるから、司法による特別の保護が必要である。さらに、生活保護は、生活が困窮した者に最低限度の生活を保障するための制度であり、重要な意味を持つ。

 したがって、①考慮すべき事項を考慮に入れず、考慮すべきでない事項を考慮し、又は③さほど重視すべきではない事項に過大に比重を置いた判断がなされた等、立法裁量の行使に逸脱・濫用がある場合には生存権の侵害が認められると解すべきである。

(3) 本問では、Xは職を転々としており、持病も有しているから、自動車での移動もやむを得ないものであるのに対して、このようなさほど重視すべきでない事項を過大に比重を置いて判断がなされているといえ、裁量の逸脱・濫用がある。

(4) したがって、本件決定は生存権を侵害し違憲である。

2 これに対して、Y市としては、生存権の具体化立法について、立法府広範な裁量を有しているしたがって、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用があると見ざるを得ないような場合に限り生存権を侵害すると解するべきである。

 本問では、生活保護法4条1項の行政解釈に基づいてなされた決定であるから、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用があるとはいえない。

 したがって、本件決定は合憲である。

3 以上に基づき私見を述べる。

(1)まず、25条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきであるとともに、当該規定を現実の立法として具体化するにあたっては、国の財政事情を無視することはできず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門的技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。

 したがって、25条1項の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択的決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠きらかに裁量の逸脱・濫用があったと見ざるを得ないような場合に限り、生存権の侵害があった解するべきである。

 本問では、生活保護法は、25条1項の規定の趣旨を実現する目的を持ってせっていされた社会保障法上の制度であり、それぞれ所定の事由に該当する者に対して生活保護を支給すること内容とする。しかし、生活保護法4条1項の「その利用し得る資産」に自動車の使用、さらに借用についてまでを含めることは著しく合理性を欠いているといえ、行き過ぎた規制であり、裁量の逸脱・濫用が明らかである。

 したがって、本件決定は違憲である。

第2 問2

1 Xの主張については、第1の1と同様。

2 これに対してY市としては、外国人であるXが生存権侵害を理由とした本件決定の違憲性を主張することはできない。なぜなら参考資料3で、「外国人に対する保護は、これを法律上の権利として保障したものではなく、単に一方的な行政措置によって行なっているものである。従って生活に困窮する外国人は法を準用した措置により利益を受ける」のみであるからである。したがって、本件決定により不利益を受けたとしても、不利益を受けないことまでをも憲法は保障するものではない。

 よって、本件決定は合憲である。

3 外国人の人権について、権利の性質上日本国民にのみ保障を認めるものを除いては、外国人にも保障が及ぶと解する生存権は、抽象的・相対的な権利であり、これが外国人に及ぶかは、生存権内容を具体化した法律によって決すべきである。そして、参考資料3において「生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて…必要と認める保護を行うこと」ができるとしている。

 したがって、被告の反論は妥当しない。

そして、生活保護を行うかは、立法府の広い裁量が及ぶものの、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用がある場合には違憲であると解する。

 本問では、Xが4人もの子どもを抱えており生計を立てるのに困難であるということや、Xが持病を持っており、電車やバスによる通勤が困難であることよりも、自動車を使用していること自体に比重を置いて判断を行なっているといえ、比例原則に反する。そうすると、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用がある。

 したがって、本件決定は生存権を侵害し、違憲である。

 

           以上(2165字)

 

※この問題は生存権の話をしなければ、そのまま行政法にも使える問題で、実際に生活保護受給者への、生活保護の決定の取消しに関する問題は結構あるような気がします。

※この前、自主ゼミで新司法試験の憲法を解いたのですが、法令違憲適用違憲を2つ書かないといけない問題があって死にそうになりました笑 このままでは到底試験には受からないので、もっと鍛錬が必要なようです・・・。