答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

憲法演習ノート 17.投票させないほうがマシ⁉︎

 

 

第1 問1(以下憲法は法令名省略)

1 まず、Xは最高裁判所裁判官国民審査法(以下、「法」という)8条により、在外日本国民には投票権(15条1項)が与えてられておらず、法は15条1項79条2項及び3項に反し、違憲違法であるから、Xとしては、が違法であることの確認の訴え(行訴法4条後段)及び、違憲違法なを放置したことにより、Xに精神的損害を「違法」に与えたとして国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求訴訟を提起する。

2 法が最高裁判所裁判官の国民審査に当たり、在外日本国民に投票権の行使を認めていないから、これは15条1項及び79条2項及び3項に基づくXの投票権を制約する。

 また、15条1項が「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」と投票権保障していることに加え、79条2項により最高裁判所裁判権の任命については国民の審査」に付するとしているから、「国民」であるXにこれらの権利は認められる。 

3 そして、日本に在住している国民にのみ投票権を認めることは、在外日本国民を差別しており、平等権に反する(14条1項)。

4 そもそも最高裁判所裁判官国民審査衆議院議員総選挙と同日に行われることから、国民が民主政に参加する機会と同時に行われていることから鑑みて、同国民審査に当たって投票する権利は、国民が司法権の最高機関である最高裁判所裁判官の適性を判断することについて意見を述べる機会でもあり、これは国民の民主政に参加する権利として重要な保障が及ぶべき権利であるということができる。そして、これを在外日本国民に認めていない法8条は強力な制限であるといえる。

5 したがって、「国民」投票権又はその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められるような事由がなければならないというべきである。そして、そのような制限をすることなしに国民審査の公正を確保しつつ投票権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り、上記のやむを得ない事由があるといえず、このような事由なしに国民の投票権の制限することは、投票権の侵害といわざるを得ない。

6 本件では、1996年に日弁連から政府に対して、「最高裁所裁判官の国民審査法も所要の改正をするよう求める」という要望書を提出している。

 しかし、このような要望書に沿った改正はなされず、2005年にも最高裁で検討されたが国会に法案を提出するにはらなかった。そうすると、1996年から2015年の約20年間の長きに及ぶ期間の間、在外国民の投票権の行使について何らの制度を創設しないまま放置し、本件国民審査に当たり在外国民の投票を認めないことについて、やむを得ない事由があったということはできない。

7 以上より、法8条はXの投票権を侵害し違憲違法である。

第2 問2

1 被告の反論

(1)確認訴訟の提起に関しては過去の公法上の法律関係の確認であるから、確認の利益が認められず不適法却下である。

(2)国家賠償法1条1項の「違法」に関しては公務員が職務を行うに当たり必要な注意義務を果たさなかったことによるものであるかどうかを基準に行うべきである。

(3)国政選挙と国民審査の議会民主制上における意義の重要性は明らかに異なっているから国民審査の意見審査基準には緩やかな基準を用いるべきである。

(4)白紙を用意すれば足りる国政選挙と異なり、国民審査には裁判官の氏名を印刷した用紙などを用意しなければならず、問題文中にある通り、郵送のための期日が不足する。

2 私見

(1)国民審査の意見審査基準については、厳格な基準を用いるべきである。

なぜなら、国民審査と国政選挙の議会民主制上における意義の重要度が違うとはいえ、司法の最高機関である最高裁判所はいわば司法審査を行う最終的な機関であり、国民にとっては自己に不利益な判決がなされた場合でも、それについての不服をそれ以上申し立てることができない。とすれば、最高裁判所裁判官自らが適性が無いと思う裁判官の罷免をさせるために投票する権利は、国政選挙において、民意を反映させることと同等の価値があるといえる。

 そうすると、このような機会を与えない法8条の制約は極めて強度のものであり、厳格な基準が妥当であるからである。

(2)これについての当てはめは第1の6で述べた通りである。して、郵送の期日が足りないという被告の反論に対しても、法16条が展示投票の場合は罷免を可とする裁判官の氏名を記入することができるとしているから、在外国民についても、最高裁判所のホームページで国民審査の期日を発表し、それに間に合うよう氏名を記入した投票用紙を郵送させるなどの方式を採用することはできる。したがって、国民審査に当たり在外国民の投票を認めないことについて、やむを得ない事由があったということはできない。

 よって、法8条は違憲である。

(3)Xのように在外国民が国民審査において投票権を行使する権利を有することの確認請求を行えば、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法であり、次回の国民審査において、在外国民名簿に登録されることに基づいて投票をすることができる地位にあるべきであることを確認する利益があるから、不適法却下とはならない。

(4)国会が長期に渡り、在外国民の投票を認めれるための立法措置を行なってこなかったことは、在外国民の投票権を確保するために様々な議論がされてきている(問題文中の政府の見解や、2005年の最高裁判決を機にした再検討)が、その制度確立の難しさから、いまだに立法がなされていないだけで、無闇に立法措置をせずに放置してきたわけではない。

 したがって、国家賠償請求訴訟については提起することはできない。

 

以上(2395字)

 

※反論はピンポイントで書いたほうがあとあと自分の首を絞めることにならずよきです。

※現行の司法試験ではリーガルオピニオン型の出題なので、これまでのように3者間で書くことはないですが、これまでと考え方は変わりませんので、反論はピンポイントに書いたほうがスムーズでよいかもしれませんね。

※久しぶりに憲法の答案を書くと、感覚が鈍っていてイケませんね笑