答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

令和元年12月会社法改正について①

0 これまで、本ブログは主に憲法の答案を掲載してきた。筆者は非常に多方向へ好奇心が向いてしまう傾向にあり、関心のある法律だけでも金商法、独禁法、知的財産法、刑事法、憲法etc... と、定まっていない。

 そもそも、本ブログは筆者がリサーチペーパーを書くために、日常的に疑問に思ったこと・関心のある論文を読んでその骨子をまとめる等のために開設したものである。

 そこで、金商法にゆかり深い会社法について、少し書きたいと思った。

 

 会社法の改正が令和元年12月に成立し、株主総会、取締役、社債、株式交付等非常に広範な範囲に改正の手が及んでいる。

 この令和元年会社法改正を語る前に、平成26年改正についても触れておきたい(機関・資金調達の部分に限る。)。

平成26年改正において、327条の2が新設された。それは、社外取締役を置いていない場合の理由の開示である。

(1)これは、コーポレートガバナンスの重要性が語られるようになって、それを元にアメリカに倣って導入された。もっとも、これは社外監査役を設置することを義務付けたものではない。

 この条文自体は、イギリスのコーポレートガバナンス・コード等で採用されていた comply or explain rule にならった規定である。

 もっとも、対象となるのは監査役設置会社であって金商法24条1項により有価証券報告書を提出しなければならない会社である。(※1)

(2)ここでいう理由の説明は、社外取締役を置かないことの理由や億必要がない理由ではなく、置くことが相当でない理由である。すなわち、社外取締役を置くことがかえって会社にマイナスになるという理由である。

 詳細は省くが、相当でない理由かどうかは究極的には株主の判断によることになる。

 現在の実務では、この改正を受けて、社外取締役を設置する公開会社は急増し、上場企業に限れば社外取締役を1名も選任していない会社はほとんど見られない。

 そうであれば、いっそのこと義務付けしてもいいのではないかと、令和元年の改正では検討すべき事項として挙げられていた。

※1 このように対象が限定されたのは、公開会社で大会社である株式会社は、類型的に見て株主構成が頻繁に変動することや会社の規模に鑑みた影響力の大きさから、社外取締役による業務執行者に対する監督の必要性が高く、また、その会社の規模から、社外取締役の人材確保に伴うコストを負担しうると考えられ、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない株式会社は、類型的に、不特定多数の株主が存在する可能性が高いことから、社外取締役による業務執行者に対する監督の必要性がとくに高いと考えられたためである。坂本三郎編著『一問一答平成26年改正会社法』〔第2版〕(商事法務、2015年)

 

2 次に、資金調達に関して26年改正で定められた重要な点を軽く紹介する。

 (1)支配株主の変動を伴う募集株式の割当て

 募集株式の割当てまたは総株引受契約の締結にあたっては、206条の2が新設された。これは、ある程度の反対株主がいる場合に、あえて総会決議を要求することは会社に負担となりひいては株主の利益を損ない、資金調達の機動性を害しないようにするためである。

(2)出資の履行の仮装

 これについては、52条の2ならびに102条の2が新設され、出資の履行を仮装した者は、払込期日や払込期間が経過した後でも、引き続き出資を履行する義務を負う。これは現物出資の場合も同様である。

 このような規定は、募集株式の発行における仮装払込みの場合(213条の2)、新株予約権にかかる払込み等が仮装された場合(286条の2286条の3)にも見られる。

 

3 以上で見てきた以外にも吸収分割・事業譲渡等の組織再編についても多数の改正が行われているが、ここでは触れない。

 また、文字数との関係で、平成29年民法改正に伴う会社法改正については、【令和元年12月会社法改正について②】以降で述べていこうと思う。

 

 なお、これまでの記述は、近藤光男+志谷匡史著『改正株式会社法Ⅴ』(弘文堂、2020年)を参照、引用している。

 

                                           (1706字)