答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

憲法演習ノート 14.逢ってみないとわからない

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Xは、改正法要指導医薬品については、対面販売を義務づけたことがインターネット薬局を経営する自由以下、「本件自由」という)を制約するものとして違憲であると主張する。

(1)本件自由は、営業の自由として職業選択の自由22条1項)の一環として保障される。

 職業の選択の自由が認められている以上、職業を遂行する自由として、どのような営業を行うかという営業の自由も保障されないと、22条1項の実効性が失われるからである。

(2)そして、職業開始、継続、廃止するという営業の自由は、個人が生計を立てるために社会的生存を維持するために資する自由であり、これは国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む上で必要不可欠である。

 したがって、仮に職業選択の自由経済的自由権として精神的自由権よりも権利の要保護性が後退するとしても、このような本件自由は重要な権利であり、これを根本から制約する改正法は強度なものであるといえる。

(3)そこで、改正法が適法であるか否かの審査基準は厳格な合理性の基準を用いるべきである。

具体的には、改正法の手段において、より制限的でない他に選びうる手段があったかどうかで決する

(4)本件では、改正法の目的が要指導医薬品について、新たな健康被害有害事象が発現するおそれがあるとされていることから、薬剤師と購入者の双方向での柔軟かつ臨機応変なやりとりを通じて使用者の状態を慎重に確認するとともに、適切な指導と指導内容の確実な理解の確認を行った上で販売するなど、医療用に準じた最大限の情報収集と、個々人の状態を踏まえた最適な情報提供を可能とする体制を確保した上で、丁寧かつ慎重な販売が求められるとされている。

 これは国民の生命・身体に健康上有害であるような場合が当該医薬品に認められるから、政府が国民の衛生環境を維持するために設けられた目的であり、やむにやまれぬ政府利益があるとも思える。

 しかし、その制約手段に関しては一律に対面販売を義務づけを行なっており、また、対面販売でないと回避できない具体的な危険の指摘がなされておらず、このような規制を設けるに当たって、同会議その他立法過程でその適否が検討された形跡がなかったことから、たとえば、マイナンバーや保険証の番号を入力し、実際に対面販売が必要な患者であるかどうかを判別することは必ずしも不可能でないし、このように立法過程が不透明な場合は、その過程で既得権益を守ろうとする者の恣意的意図が働いている可能性もある。

 そうすると、制約手段に関しては、より制限的でない他に選びうる手段があったといえる。

2 したがって、改正法は必要最小限度の手段を用いているとはいえずXの本件自由を制約違憲である。

第2 問2

1 国の反論

 営業の自由は、職業選択の自由支えるものとして22条1項により保障されているが、職業選択の自由経済的自由として分類され、精神的自由権よりも保障される程度は後退する。改正法施行されるまでに移行期間が3年間と比較的長期の猶予期間が設けられており、既存の販売店に対して配慮を行なっている。 

 そうすると、本件における違憲審査基準は、必要かつ合理的な範囲にとどまる限り経済的自由の規制が許されるという緩やかな基準を用いるべきであり、本件では目的が重要で手段についても必要かつ合理的な範囲にとどまるといえるから、改正法は合憲である。

2 私見

(1)Xの自由の保障の程度は重く見るべきである。

 なぜなら、Xがインターネット上で医薬品を販売するにあたり、指導医薬品はその効果が絶大であるが故に、副作用と知って人体に有害な影響が出てしまうものと考えることができる。そうすると、効果が絶大である医薬品は一般人にとっても貴重な薬となり、求めるものが多いことも十分に予想される。

(2)そうすると、このような大きな需要に対して、供給で応えることができないインターネット上の販売店においては一般の薬局と異なり、自宅において医薬品を注文することができるという利便性があるという点を考慮してもなお、要指導医薬品を売ることができないことによる経済的損失は大きいそうすると、改正法における規制により、Xの本件自由が制約される程度は極めて重大である。

 そして、自由な職業活動が社会公共対してもたらす弊害を防止するための消極的・警察的措置である場合、改正法による制約に対しては、その手段においてより制限的でない他に選びうる手段があるか否か違憲審査を行うべきである。

(3)本件においては、原告が主張する通り、対面販売以外でも、要指導医薬品を求める患者や購入者の態度や状態を確認することは可能であり、また、要指導医薬品は対面販売であれば売ることができるから、その注文がインターネット上でなされた場合に、近くの薬局と提携し、対面で指導することを委託すればよいのだから、インターネット販売を一律に規制する理由はない

 このようにより制限的でない他に選びうる手段があるといえる本件においては、改正法は違憲である。

 

                              以上(2094字)

※「より制限的でない他に選びうる手段があるか」というのは、問題となっている立法目的を達成しうる上で、問題となっている手段よりも制限的でないもので、目的が達成できるものでなければなりません。そうすると、他にいろんな手段が思い浮かんだとしても、問題となっている手段と同程度に目的達成できなければ、LRAとして認められません。実際に他人の答案を見たわけではありませんが、LRAの意味を履き違えている方がいらっしゃるように感じましたので、念のため。

※たとえば平成28年の司法試験公法系第1問の問題のように、他に選びうる手段がかなり思いつく問題もありますが、実際にそれが有効なのか、実効性があるのか?という観点を度外視して答案を書くことはダメだということです。

【追記2020.3.14】

※LRAについては、具体的な事実を用いて主張立証するために、「より緩やかな方法で目的達成が可能である」という事実立証ではなく、「より強い規制手段が必要であることの立法事実の不存在」を根拠として憲法違反を導く判断方法があります。

違憲審査基準には、利益衡量の枠付けという機能のほかに、政府の行為理由を統制する機能、すなわち「違憲な目的をあぶり出す」機能をも有します。もっとも、ここでいう「違憲な目的」とは、目的手段審査での審査対象の「目的」とは異なります。後者の審査をpassできなかったときに初めて前者の「目的」が違憲な目的であったことが「あぶり出」されるのであった、目的審査の段階で常に、立法目的を違憲なものであるかのように解釈するのはダメです。