答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

憲法演習ノート 18.天国に行ったワンコ

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Xは、Aによる立入調査を拒否し続け、Aを立ち入らせなかったことが、新法37条1項4号の規定に反し、新法96条3項に基づき起訴され、加えて、虐殺動物死体の届出義務違反の罪(新法84条、96条5項)でも起訴されている。

 しかし、新法96条は、35条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として、「その効力を有しない」98条1項)。したがって、新法96条に基づく本件起訴理由は法・無効な検査であるから、これを拒んだとしても新法37条1項4号の構成要件に該当しないから、「被告事件について犯罪の証明がない」(刑事訴訟法336条)。また、新法84条も、38条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として「その効力を有しない」。                   

 したがって、「被告事件が罪とならない」から、Xは「無罪」(刑事訴訟法336条)である。   以下、詳述する。 

2 立入調査拒否について

(1)35条1項は、「何人も、その住居、書類及び所持品については、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」と規定し、同条2項は「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する格別の令状により、これを行ふ」と規定しているところ、その趣旨は、捜索、押収等にあたって、事前の司法審査を要求することによって、個人の重要な法益である、住居権、財産権、プライバシー等に十分に保護することにあるから、刑事手続以外にもその保障が及ぶ場合があると解するべきである。

 すなわち、強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する行政手続の場合には、「令状」が必要となるとかいするのがそうとうである。

(2)新法96条3項が定める罰則により、同37条1項各号に基づく処分を受忍するよう強制されるのであるから、新法37条1項に基づく処分は、強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する行政手続である。したがって、新法37条1項に基づく処分には「令状」が必要となるところ、同条は「令状」なしに処分できることを認めているから、35条1項に違反し、「この憲法…の条規に反する法律」として、「その効力を有しない」。

 したがって、法37条1項に基づく立入調査は違法無効な調査であって、これを拒んだとしても新法96条3項の構成要件には該当しないから、「被告事件について犯罪の証明がない」。

3 届出義務違反について

(1)38条1項は、「何人も、事故に不利益な供述を強要されない」と規定しており、何人も自己が刑事上の責任に問われるおそれがある事項について供述を強要されないことを保障したものである。そして、同条が強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する行政手続法にも適用されることは前述のとおりである。

(2)新法96条に基づく届出義務が強制されることは、「発見に至った経緯」を供述しなければならない。そうすると、強制的に個人の住居権、財産権、プライバシー等を制約する義務であるといえる。したがって、新法84条は、委員会により、刑事訴追を受けるおそれのある事項について供述を強要するのを許容するものであるとして、38条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として「その効力を有しない」

 よって、「被告事件が罪とならない」。

4 以上より、Xは「無罪」である。

第2 問2 検察官の反論

1 立入調査拒否について

(1)35条1項は刑事手続のみに関する規定であって、行政手続にはその保障が及ばないものと解する。したがって、新法37条1項に基づく立入調査に「令状」は不要であり、同条は35条1項に違反するものではない。

(2)仮に行政手続にも38条1項の保障が及んでいるとしても、新法37条1項に基づく調査に35条1項の保障は及ばないから、同調査に「令状」は不要であり、同条は35条1項に違反しない。

 そして、Xが新法371に基づく調査を拒んだことに争いはないから、Xの行為は新法96条3項に該当する。

2  届出義務違反について

(1)上記の通り、35条同様、38条1項も刑事手続のみに関する規定であって、行政手続にはその保障が及ばないと解する。したがって、新法84条は、38条1項に違反するものではない。

(2)仮に行政手続にも35条1項の保障が及んでいるとしても、新法84に基づく届出義務38条1項の保障は及ばず同届出義は38条1項に違反しない。

(3)そして、Xが届出に違反したことについては争いがないから、Xの行為は新法84条に該当する。

3 結論

 以上より、「犯罪の証明があった」(刑事訴訟法333条1項認められるから、Xは有罪である。

第3 問2 私見

1 立入調査拒否について

(1)まず、行政手続に35条1項の保障が及ぶかが問題となる。

 35条1項は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下おこなわれるべきであることを保障した趣旨であるが、同項が刑事手続について規定したのでは、近代消極国家において刑罰権が国民の権利・自由に対する最大の脅威であったからにすぎない。しかし、今日では福祉国家理念の下、国家が国民生活に対し多種多様な形でかかわりを持つようになってきており、行政権の行使による国民の権利・自由の侵害の危険性が大きくなっている。

 したがって、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に35条1項による保障の枠外にあると判断することは相当でない。

 もっとも、行政手続は、刑事手続との性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様である。そこで、当該強制が刑事責任追及を目的とする手続か、刑事責任追及のための資料収集の作用を一般的に有しているか否か、強制の態様程度いかん、当該強制の目的は何か、目的と手段との均衡の有無等を考慮して、個別具体的に適用の有無を判断すべきである。

(2)新法37条は、委員会が、事件について必要な調査をするために物件を検査っすることを定めている。さらに同条4項は帳簿書類等の検査であるから、刑事責任追及のための資料収集の作用を一般的に有しており、刑事責任追及を目的とする手続ではない。

 しかし、動物愛護委員会(ごとき)に、住居にまで立ち入って検査を強制させることはあまりにも不均衡、不合理である。

 したがって、このような場合には35条1項による保障が行政手続にも及びうる

以上から、立入調査については「令状」が必要であり、無令状による立入調査をすることは35条1項に違反し、無効である。

(3)したがって、法37条1項に基づく立入調査は違法・無効な調査であって、これを拒んだとしても新法96条3項の構成要件には該当しないから、「被告事件について犯罪の証明がない」。

2 届出義務違反について

(1)上記1同様に、行政手続に38条1項の保障が及ぶかが問題となる。

 38条1項の法意が、何人も刑事上の責任を問われるおそれがある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解されるべきところ、同条の保障は、純然たる刑事手続においてばかりでなく、実質上、刑事責任追及のたの資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的有する手続には、等しく及ぶものと解するのを相当とする。

(2)新法84条による届出義務は、動物取扱業者において、動物愛護の精神の下、動物に危害を与えさせることを予防せしめることにある。しかし、虐殺動物死体等を発見した場合において、届出を義務づけること、たとえ発見者が虐殺を行なった者でないとしても、犯人を発見するために必要な資料を収集する、すなわち、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続であるといえる。

 したがって、本件においては届出義務をするに当たり、38条1項の保障が及ぶから、新法84条は、委員会により、刑事訴追を受けるおそれのある事項について供述を強要するのを許容するものであるとして、38条1項に違反し、「この憲法の条規に反する法律」として「その効力を有しない」。よって、「被告事件が罪とならない」。

3 結論

 以上より、Xは「無罪」である。

 

                                          以上(3452字)

 

※みんな大好き川崎民商事件ですねー。まあ私が個人的に好きなだけかもしれませんが笑

※ここらへんになってくると憲法行政法の交錯が著しくなってきますね。

 

※『憲法演習ノート』の答案例も残り少なくなってきました。友人に貸していた『憲法演習ノート』の本も返ってきましたし、なんだか哀愁じみたものを感じてます。