答案作成の節約法と法律解釈の仕方

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憲法演習ノート 8.テロの記憶

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 法令違憲について

(1)本件において、BIFAは「B市内における宗教者の密接な交流を通じて、B市における宗教の発展を図ること」という目的の達成のため、パーティー・ルームの利用許可を求めたが、本件処分により、使用ができないこととなった。

 これは、パーティー・ルーム管理条例(以下、「本件条例」という)1号及び2号に基づきなされたもので、BIFAの信教の自由(20条1項後段)を侵害し、違憲であると主張する。

 本件不許可処分によって、BIFAは本件パーティーを通じてB市における宗教の発展を図る自由が制約されている。 

 また、20条1項は、信仰の自由、宗教的行為の自由、宗教結社の自由を保障しているところ、宗教的行為の自由の一環として、自己の信仰上の教義に基づき宗教の発展に尽くす行為の自由も保障されているといえる。よって、本件BIFAの自由も20条1項で保障される。 

 そして、信教の自由は、戦前において神道が国家的宗教とされ、軍国主義の精神的支柱となった裏で、他の宗教が冷遇された歴史的経緯を踏まえ、特に明文で保障された重要な権利である。また、本件不許可処分の元になる本件条例は本件自由を直接的に制約するものであり、これを制約することは制約目的がやむにやまれぬ政府利益のため、必要最小限度のものであるといえない限り合憲とは認められない。

 本件では、本件条例がパーティールームの管理に関する条項を定めているところ、必ずしもやむにやまれぬ政府利益のためとはいえない。その制約手段としても、利用許可を得られなければ絶対に使うことはできないのだから、必要最小限度ともいえない。

 よって、本件条例は違憲である。

2 適用違憲について

 仮に本件条例が合憲であっても、本件条例を適用することが違憲法であるとすることはできるので、以下詳述する。

(1)本件において、BIFAB市内における宗教者の密接な交流を通じて、B市における宗教の発展を図ること」という目的の達成のため、パーティールームの利用許可を求めたが、本件処分により、使用ができないこととなった。 

 これは、パーティー・ルーム管理条例1号及び2号に基づきなされたもので、BIFAらの「集会の自由」(21条1項)を侵害するものであって、違憲であり、「違法」国家賠償法1条1項)である。以下、詳述する。

ア まず、本件不許可処分により、BIFAが本件パーティールームを利用して問題文中の①乃至③の活動を行うことができなくなり、BIFAの本件パーティールームを利用して本件活動を開催する自由(以下、「本件自由」という)が制約されている。

イ また、「集会」とは、多数人が政治・経済・学問・芸術・宗教などの問題に関する共通の目的をもって一定の場所に集まることをいうところ、本件パーティーは、多数人が問題文中の①乃至③を行なうという共通の目的をもって本件パーティールームに集まるものである。よって、本件自由は「集会の自由」として保障される。

ウ 集会の自由は条文上、精神的自由権として定められており、精神的自由権は民主政の過程を支えるものであり、一旦破壊されれば議会でこれを是正することはできないから、裁判所が積極的に介入して民主政の正常の過程を回復する必要がある。

 また、集会は国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、対外的に意見を表明するための有効な手段である。

 そこで、本件条例1号及び2号に当たるかは、本件パーティールームにおいて本件パーティーが行われることによって、人の生命、身体又は又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、明白かつ現在していることが必要である。 

 しかし、本件では、本件自由によって実質的な害悪を引き起こす蓋然性が明白であり、その実質的害悪が重大でかつ、その害悪の発生が時間的に切迫しているとはいえず、当該規制手段が、このような害悪を避けるために必要不可欠なものともいえない。 

 したがって、本件自由は、本件条例1号及び2号に当たるものではなく、このような本件不許可処分は違憲・違法である。

(2)さらに集会の自由に加えて、「国及びその機関」たるB市が、本件不許可処分を行うことが、「宗教的活動」に当たるとして、本件不許可処分は政教分離原則に反するとして、違憲違法であると主張する。

 20条3項は政教分離原則の現れであるところ、たしかに、政教分離規定は、いわゆる制度的保障であるが、制度の周辺部分の侵害を許すものであるから、運用方法の如何によっては、信教の自由の保障が図れない可能性がある。 

 そこで、かかる保障の目的達成のため、政教分離の程度は厳格なものが要求されると解する。

 具体的には、①問題となった行為が世俗的か宗教的かその行為の主要な効果が宗教を振興し、又は抑圧するかものか、③宗教と国家過度のかかわり合いを促すものかどうかという3要件で判断を決すべきである。また、政教分離原則は厳格な宗教的中立性を要求するものだから、1つの要件でも満たさないとなると、違憲であると解すべきである。

 本件では、本件不許可処分の主要な効果が、D教団のみならず、BIFAに所属するイスラム教やキリスト教ヒンズー教ユダヤ教等の宗教を抑圧するものということができる。 

  したがって本件不許可処分は政教分離原則に反し、違憲違法である。

第2 問2

1 B市の反論としては、まず法令違憲については、原告の主張通りの審査基準を用いても、なおやむにやまれぬ政府利益のため、必要最小限度のものであるということができ、原告の法令違憲の主張は主張自体失当である。

2 適用違憲について、集会の自由の原告の主張に関しては、本件不許可処分が集会の自由を制約するものとした場合にその違憲審査基準は本件自由が集会の自由によって保障される程度の高さと、これを制約することによって得られる公共の福祉とを比較衡量すべきである。

  具体的には、集会が開かれることによって、人の生命身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険な自体が生ずる蓋然性が認められる場合は合憲であると解する。

 本問ではこのような蓋然性は認められ、合憲である。

(2)さらに、政教分離原則に反するかは、当該不許可処分が「宗教的活動」に当たるか否かによって決すべきであり、「宗教的」とは、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対して、援助、助長、促進、又は圧迫、干渉等になるような行為をいいうと解すべきである。

本問では、当該行為の目的が宗教的意義を持つものとは考えられず、「宗教的活動」に当たらない。よって、政教分離原則に反せず、合憲である。

3 以上より、以下で私見を述べる。

(1)まず法令違憲については、原告の信教の自由が制約されており、制約の元となっているのは本件条例1号、2号であるところ、これらの条項は「公共の福祉」(12条、13条)資するものであるといえる。 

 そこで、このような制約が許されるかは、原告の主張どおり、制約目的がやむにやまれぬ政府利益のため、制約手段が必要最小限度のものといえるかどうかで決すべきである。

 本件では、BIFAはイスラム教やキリスト教等世界有数の宗教を信仰する教徒も所属する団体であり、現代社の高度に発展した情報化社会において、あらゆる国において宗教に対する差別・迫害・区別は敏感にマスコミや一般市民に反応され、全世界(特に先進諸国)でクローズアップされかねない話題性のあるものである。そうすると、BIFAの本件自由を制約することによって、B市、ひいては日本国政府が先進諸国から批判され、特定の宗教を狙い撃ちにした制約をするとは遅れた国であるという誹りを受けることが考えられ、このような制約目的は政府利益のために資するものということはできず、本件条例は違憲である。

(2)仮に、このような法令違憲の主張が苦しいとしても、本件不許可処分は、集会の自由を制約するものである。なぜなら、集会の自由を制約する本件不許可処分の違憲審査基準は、基本的自由権としての集会の自由の重要性と、当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の制度を衡量して決すべきである 

 具体的には、本件不許可処分が合憲であるといえるためには、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるということだけでは足りず、明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合に限られる。

  また、そのような事態の発生が、許可権者の主観により予測されるだけでなく、客観的な事態に照らして具体的に予測される場合でなければならない。

  本件では、公安調査庁がその危険性を指摘するD教団がBIFAの構成団体となっていることで、同教団員がパーティールームに出入りすれば、マンション住民や一般利用客の生命身体又は財産等に対する具体的危険が生じる蓋然性が予見できるとしている。

 これは依然として蓋然性にすぎず、当該危険が明白かつ現在しているとはいえないし、そもそもD教団はテロの被害者であり、このように集会の主催者が平穏に集会を行おうとしているのに対して、その集会のもくてきや主催者の思想心情に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止・妨害しようと紛争を起こす恐れがあることを理由に公共の施設の利用を拒むことは憲法21条の趣旨に反許されないものである敵意ある聴衆の法理)。

 したがって、本件不許可処分はBIFAの集会の自由を侵害し、違憲違法である。 

(3)政教分離原則については、本件不許可処分が集会の自由に反し違憲違法となったので、私見省略する。

 

以上    

 

※信教の自由についての基準は空知太か津地鎮祭の基準を使うといいと思います。いずれにせよ使う問題文の事情は同じになることが多いと思います。

※第2の3(3)においては私見を省略していますが、まあ力尽きたんでしょう笑 気が向いたら補筆しておきます。