答案作成の節約法と法律解釈の仕方

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事例研究憲法 第11問 社会保障の権利―学生年金事件―

 
第1 設問1(以下、憲法は題名省略)
1 Xとしては、法7条2項が学生を排除しているが、これによってXが障害年金を受給できなことがXの「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(25条1項。以下、生存権」という。)を侵害し、「この憲法の条規に反する法律」として「効力を有しない」(98条1項)である。よって、法7条2項の要件を具備するXに対してなされた本件不支給決定は「違法」(国家賠償法1条1項)であって、取り消されるべきである。以下、詳述する。
2 まず、上記のとおり本件条項は、Xの障害年金を受給する権利を制約するものである。
3 また、生存権自体は、法律による具体化を待って初めて裁判規範たり得る抽象的権利であるが、国民年金法は、「日本国憲法25条2項に規定する理念に基づき、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的」(法1条)として制定されているもので、国民に対して生存権を保障する25条1項の趣旨を具体化したものといえるから、同法は、生存権の具体化立法といえる。したがって、同法の定める障害年金を受給する権利は生存権の一環として保障される。
4 ここで、生存権は、まさに「生きる権利」そのものであるから、司法による特別の保護が必要である。また障害基礎年金のような無拠出制の福祉年金は、最低限度の生活保障のための制度として位置づけられるべきもので特に障害という不測の事故によって支給されるものであることから重要な意味を持つ。
 そこで、①考慮すべき事情を考慮せず、②考慮すべきでない事情を考慮し、又は③重視すべきでない事情に過大に比重を置いた判断がなされた等、立法裁量の行使に逸脱濫用がある場合には、生存権の侵害が認められると解するべきである。
5 これを本件についてみると、「健全な国民生活の維持」を目的と掲げているにもかかわらず、Xに対して障害基礎年金を受給させておらず、重視すべきでない事情に過大に比重を置いた判断がなされており、立法裁量の行使に逸脱濫用がある。
 よって、本件条項は、生存権を侵害し、「この憲法の条規に反する法律」として「効力を有しない」。 
6 以上より、本件不支給決定は、違法であり、取り消されるべきである。
第2 設問2
1 国側の反論
(1)生存権の具体化立法について、立法府は広範な裁量権を有している。したがって、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱濫用と見ざるを得ないような場合に限り、生存権を侵害すると解すべきである。
(2)本件では、本件不支給決定が著しく合理性を欠いて、明らかに裁量の逸脱濫用があるとはいえない。
 よって、本件条項は生存権を侵害するものではなく有効である。
(3)したがって、本件不支給決定は取り消されるべきものではない。
(1)まず、本件条項が生存権を侵害するか否かをどのように判断するべきかが問題となる。25条1項がいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきであるとともに、当該規定を現実の立法として具体化するにあたって、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な推察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。
 したがって、25条1項の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱濫用と見ざるを得ないような場合に限り、生存権を侵害すると解するべきである。
(2)国民年金法上の障害基礎年金は、25条1項の規定の種子を実現する目的をもって設定された社会保障法上の制度であり、所定の事由に該当するものに対して年金という形で一定額の金員を支給することをその内容とする。そして、このような所定の事由についても著しく合理性を欠き、明らかに裁量の逸脱濫用があるような規定は見受けられない。
 したがって、本件条項は生存権を侵害しない。
(3)以上より、本件不支給決定は取り消されるべきではない。
​                 以上
 
答案を書くのに要した文字数は一緒に記載したほうがいいですかね?