答案作成の節約法と法律解釈の仕方

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事例研究憲法 第7問 集会の自由―暴走族追放条例違反事件―


第1 設問1
1 法令違憲について
Yの弁護人として、本条例16条1項1号、17条は集会の自由(憲法21条1項(以下法令名省略))に反し違憲であると主張する
(1)まず、「集会」とは、多数人が政治・学問・芸術・宗教・思想などの共通の目的を持って一定の場所に集まることをいうところ、Yらは、本件広場に本条例に反対しその速やかな廃止を求めるために集まっているから、「集会」にあたる。
(2)そして、集会の自由に対する制約は、基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるところ、精神的自由権は民主政の過程を支えるものであるから、いったん破壊されてしまうと議会でこれを是正することが難しいため、裁判所が積極的に介入し民主政の正常な過程を回復する必要がある。
 また、集会は、国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、対外的に意見を表明するための有効な手段であり、表現の自由の核ともなる重要な権利である。
(3)これに対して、本件では本条例16条1項1号により、集会の種類に着目した規制が設けられており集会自体を規制するものより、より特定の集会を排除しようとする強度な制約があるといえる。このような重要な権利に対する強度の制約が許容されるか否かは厳格かつ慎重に判断されなければならないと解するところ、具体的には、①目的がやむにやまれぬ政府利益のため、②手段が目的達成のために必要不可欠なものに限り許容されると考える。
(4)本件規定の目的は、市民生活の安全と安心である(本条例1条、16条)が、これに関する立法事実となるのは1999年1120日に暴走族が暴徒化したものであると考えられるも、過去の一事象に基づいてこのような規制がなされる目的に欠けるところがあるといえる。また、手段としても、具体的な危険が発生した場合に限り、退去命令や、以後の集会の禁止をすればよいのであるから、必要不可欠なものとはいえない。
 したがって、本条例16条1項1号、17条は21条1項に反し違憲である。
2 適用違憲について
(1)16条1項1号の合憲解釈については限定解釈すべきである。すなわち、「公衆に不安又は恐怖を覚えさせる」とは、公衆の身体生命に具体的な危険の発生が差し迫っていることをいうような場合をいうと解する。
(2)本件では、11月23日午後10時31分から、H市職員Aの指示を無視して、「暴走族追放条例反対」などと叫び、さらには、本件広場の中央部一杯に円陣を組み、「H最強。16代目C。よろしく」などと大声を発していたに過ぎず、公衆の身体生命に具体的な危険の発生が差し迫っているとはいえない。
(3)したがって、本件処分は違憲である。
第2 設問2
1 検察官の反論
法令違憲について
(1)暴走族が公園において集会を開くことは、およそ憲法が保障する「集会の自由」が予定する権利とはいえない。仮に「集会の自由」により保障されたとしても、その保障の程度は思想や意見を交換するための「集会」よりも後退するといわざるを得ない
 そこで、本件条例16条1項1号が違憲であるか否かは緩やかに判断されるべきであり、具体的には目的が重要で、手段と目的との間に合理的関連性があれば合憲であると解するべきである。
(2)本件では、立法目的は1999年11月20日に暴走族が暴徒化した際に負傷者と多くの逮捕者を出したことにより市民の安心・安全を確保するという重要な公共の利益の保護にあるところ、このような目的は重要である。
 また、市民の安心・安全を確保するのは国家の役目であり、その目的を達成するため、実効性を担保するためにも暴走族の集会自体を制限することは合理的関連性がある。
(3)したがって、本件条例は合憲である。
適用違憲について
(1)H市が管理する公園であるから、これを利用させるか否かについては、H市市長に裁量がある。
(2)したがって、本条例16条1項1号のいう「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」とは、一般人の感覚として不安や恐怖を感じる相当程度の蓋然性があれば足りると考えるところ、深夜10時に40名もの集団が公園で大声を出していれば、一般人の感覚として不安を感じるのは容易に想像できる。
(3)よって、本件処分は適法である。
2 私見
法令違憲について
(1)まず、本件自由は「集会の自由」として保障される。なぜなら、暴走族であっても日本国民には等しく憲法の保障は及び、暴走族にも彼らなりの思想や意見を持っているのであるから、これを伝達・交流する場は必要である。
(2)また、本条例16条1項1号は、暴走族追放条例という条例の題名からして明らかなように、暴走族の集会の禁止を特に狙い撃ちして定めているというべきであるから、内容規制であるといえる。
(3)したがって、本条例が、合憲か否かは厳格な基準によって判断すべきであり、具体的には①目的がやむにやまれぬ政府利益のため、②手段が必要不可欠なものである場合に限り合憲であると解する。
 本件では、暴走族が多数人を巻き込み大きな事件を起こしたというような事実もなく、そのような事件がH市において複数回発生しているなどというような事情は見受けられない。そうすると、このような条例を規定する目的に欠けるところがあり、やむにやまれぬ政府利益はない。また、手段としても、公衆の不安や恐怖を感じさせるような行為をした暴走族を個別に取り締まれば十分に目的は達成できると考えられるから、手段としても必要不可欠ではない。
(4)よって、本条例は違憲違法である。
適用違憲について
 本条例について、たしかに市長に裁量があるとしても、本条例16条1項1号の「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」とは、暴走族同士の衝突などによって公衆の生命身体に生じる明らかに差し迫った危険が具体的に予見される場合をいうと解するところ、本件において、Yらに公衆の生命身体に生じる明らかに差し迫った危険が具体的に予見されるような事情はない。
 したがって、本件処分は違憲違法である。

​以上

 

※世間的には私大ロー入試の真っ最中とのことですが、ロー入試レベルでは、このような長文の答案を想定しておらず、私見のところさえ書ければ少なくとも沈まない答案が書けるはずです。