答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

憲法演習ノート 15.リスク管理のリスク

 

 

第1 問1(憲法は以下法令名省略)

1 B村の住民は、本法4条が災害時に当該地域における居住を禁止することは「財産権」(29条1項)を侵害し、また、本法は財産権の内容を「公共の福祉に適合するやう」(同条2項)定められておらず、29条2項に反するものであるとして違憲であり本件居住禁止処分は違憲違法であると主張する。

 29条は私有財産制度のみを保障するだけでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障するものであるところ、財産は個人の生活に不可欠であり、個人の自由で独立の人格の存在を可能にする経済的基礎である。 

 B村の住民にとって、B村での生活は社会的経済的活動の基礎をなすものであり、「財産権」として保障される。

 これに対して、本件居住禁止処分は、このようなB村の住民の財産権を制約するものであり、また、B村の住民が私有財産を「公共のために用ひ」ているにもかかわらず、正当な補償を行なっていないことは、B村の住民の財産権を制約する程度が極めて重大である。

 そこで、このような本法が合憲であるかの審査基準は厳格なものを用いるべきである。具体的には、本法の目的が真にやむにやまれぬ政府利益のため、手段が目的達成のために必要最小限度のものであるか否かによって決する。

2 本法の目的は北西日本大震災により、全国各地でダムの設備上の瑕疵があっても水力発電をし続けなくてはならない緊急状況下で、ダム周辺の住む住民の安全を確保するために定められており、財政逼迫という理由から政府利益のためともいえるし、国家として国民の生命を守る義務を果たすためでもあり、目的がにやむにやまれぬ政府利益のためであるとはいえそうである。しかし、手段において、住民を指定区域に居住させないというのみ定め、居住の移転に伴う費用などの保障は行なっていない。それどころか、居住禁止命令に従わなかった者には罰則が与えられる。このような手段は、居住移転については、政府が各々の費用を補償するか、もしくは仮設住宅を設けるなどのより制限的でない他に選びうる手により「正当な補償」を行えたにもかかわらず、これを行なっていない。

 したがって、手段が必要最小限度のものとはいえない。

3 以上より、本法は財産権の内容を「公共の福祉に適合するやう」定めておらず、29条2項に反し違憲であり、これに基づきなされた本件居住禁止処分も違憲違法であ  

第2 問2

1 国の反論について、国としては、B村の住民にとって、Bの居住が禁止されることは「財産権」の制約に他ならないが、本法は国家の緊急状況下で国家の存続のために水力発電による電力の供給を特定指定ダムに担わせざるをえないこと。これに加えて、指定ダムのリスク管理のため、万が一に備えて、周辺地域の居住を禁止しており、これは周辺住民の生命・身体を保護するために行われている。

 このようにひとえに財産権といっても、その内容は多種多様であり財産権に対する規制を必要とする社会的理由ないし目的も、社会生活における安全保障や秩序の維持を図るものまで多岐にわたる。

 そこで、財産権に対する規制が「公共の福祉に適合する」か否かは、規制の目的必要性、内容、その規制によって制約される財産権の性質や制限の程度などを比較衡量して判断すべきである。

 本法は国家の緊急状況下で国家の存続のために水力発電による電力の供給を特定指定ダムに担わせざるをえないこと。これに加えて、指定ダムのリスク管理のため、万が一に備えて、周辺地域の居住を禁止しており、これは周辺住民の生命・身体を保護するために行われている。この規制によって制約される財産権の種類としては、B村住民の生活の基礎である。そして制限の程度は国家の緊急状況下でやむをえないものであり、これはB村のみならず、全国各地で同様の状況が発生している。 

 このような事情を比較衡量すると、規制の目的、必要性が、規制によって制約される財産権に優先されるものといえる。

 したがって、本法は合憲である。

2 私見

 被告の審査基準は「公共の福祉に適合する」かを比較衡量により判断しているが、このような審査基準は結論いかようにもすることができ妥当でない。 

 そもそも、財産権は不可侵である(29条1項)。仮に制約するにしても公共の福祉に適合するようにしなければならない。

 B村の住民は国家の政策により、自らの意思にかかわらず、その私有財産を「公共のために用ひ」らされている。このような状況下では「正当な補償」は必須であり、憲法が少数者の権利を守るためのものであることに鑑みれば、公共の福祉に適合する」かは少数者の権利・利益を守るため厳格に審査しなければならない。とはいえ、「公共の福祉」に資する要請も重要であるから、制約目的が公共の福祉に合致するものであっても、その手段が目的達成のため必要かつ合理的なものであるといえない限り合憲であるとはいえないと解すべきである。

 本法の制約目的は、国家の存続・維持という重要な目的があり、これは公共の福祉に合致するものであるが、制約手段においてB村に居住禁止でありかつB村から移住するにあたり、国家からなんらの支援を受けることができないのは、あまりにもB村民にかかる負担の程度が大きい。第1で主張したように、また東日本大震災で政府が行なったような仮設住宅を設けるなどの手段をすることは可能であるといえるから、B村の居住禁止に伴い 

 損失補償を行わないとする本法は、制約手段において必要かつ合理的なものとはいえず、29条2項に反し、違憲であり、これによる本件居住禁止処分は違憲違法である。

 

 以上(2340字)

 

※久しぶりの更新になってしまいました。ローに入って自分の処理能力のなさに幻滅してます。

※この前、期末試験が終わり、既修1年目は終わりました。もっとも進級できるかはまったくわかりません。後期の必修科目は重く、過去問より数段は難しい(出題の意図がわかりにくい)問題が出たため、まったく手応えがありません。

憲法演習ノート 14.逢ってみないとわからない

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Xは、改正法要指導医薬品については、対面販売を義務づけたことがインターネット薬局を経営する自由以下、「本件自由」という)を制約するものとして違憲であると主張する。

(1)本件自由は、営業の自由として職業選択の自由22条1項)の一環として保障される。

 職業の選択の自由が認められている以上、職業を遂行する自由として、どのような営業を行うかという営業の自由も保障されないと、22条1項の実効性が失われるからである。

(2)そして、職業開始、継続、廃止するという営業の自由は、個人が生計を立てるために社会的生存を維持するために資する自由であり、これは国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む上で必要不可欠である。

 したがって、仮に職業選択の自由経済的自由権として精神的自由権よりも権利の要保護性が後退するとしても、このような本件自由は重要な権利であり、これを根本から制約する改正法は強度なものであるといえる。

(3)そこで、改正法が適法であるか否かの審査基準は厳格な合理性の基準を用いるべきである。

具体的には、改正法の手段において、より制限的でない他に選びうる手段があったかどうかで決する

(4)本件では、改正法の目的が要指導医薬品について、新たな健康被害有害事象が発現するおそれがあるとされていることから、薬剤師と購入者の双方向での柔軟かつ臨機応変なやりとりを通じて使用者の状態を慎重に確認するとともに、適切な指導と指導内容の確実な理解の確認を行った上で販売するなど、医療用に準じた最大限の情報収集と、個々人の状態を踏まえた最適な情報提供を可能とする体制を確保した上で、丁寧かつ慎重な販売が求められるとされている。

 これは国民の生命・身体に健康上有害であるような場合が当該医薬品に認められるから、政府が国民の衛生環境を維持するために設けられた目的であり、やむにやまれぬ政府利益があるとも思える。

 しかし、その制約手段に関しては一律に対面販売を義務づけを行なっており、また、対面販売でないと回避できない具体的な危険の指摘がなされておらず、このような規制を設けるに当たって、同会議その他立法過程でその適否が検討された形跡がなかったことから、たとえば、マイナンバーや保険証の番号を入力し、実際に対面販売が必要な患者であるかどうかを判別することは必ずしも不可能でないし、このように立法過程が不透明な場合は、その過程で既得権益を守ろうとする者の恣意的意図が働いている可能性もある。

 そうすると、制約手段に関しては、より制限的でない他に選びうる手段があったといえる。

2 したがって、改正法は必要最小限度の手段を用いているとはいえずXの本件自由を制約違憲である。

第2 問2

1 国の反論

 営業の自由は、職業選択の自由支えるものとして22条1項により保障されているが、職業選択の自由経済的自由として分類され、精神的自由権よりも保障される程度は後退する。改正法施行されるまでに移行期間が3年間と比較的長期の猶予期間が設けられており、既存の販売店に対して配慮を行なっている。 

 そうすると、本件における違憲審査基準は、必要かつ合理的な範囲にとどまる限り経済的自由の規制が許されるという緩やかな基準を用いるべきであり、本件では目的が重要で手段についても必要かつ合理的な範囲にとどまるといえるから、改正法は合憲である。

2 私見

(1)Xの自由の保障の程度は重く見るべきである。

 なぜなら、Xがインターネット上で医薬品を販売するにあたり、指導医薬品はその効果が絶大であるが故に、副作用と知って人体に有害な影響が出てしまうものと考えることができる。そうすると、効果が絶大である医薬品は一般人にとっても貴重な薬となり、求めるものが多いことも十分に予想される。

(2)そうすると、このような大きな需要に対して、供給で応えることができないインターネット上の販売店においては一般の薬局と異なり、自宅において医薬品を注文することができるという利便性があるという点を考慮してもなお、要指導医薬品を売ることができないことによる経済的損失は大きいそうすると、改正法における規制により、Xの本件自由が制約される程度は極めて重大である。

 そして、自由な職業活動が社会公共対してもたらす弊害を防止するための消極的・警察的措置である場合、改正法による制約に対しては、その手段においてより制限的でない他に選びうる手段があるか否か違憲審査を行うべきである。

(3)本件においては、原告が主張する通り、対面販売以外でも、要指導医薬品を求める患者や購入者の態度や状態を確認することは可能であり、また、要指導医薬品は対面販売であれば売ることができるから、その注文がインターネット上でなされた場合に、近くの薬局と提携し、対面で指導することを委託すればよいのだから、インターネット販売を一律に規制する理由はない

 このようにより制限的でない他に選びうる手段があるといえる本件においては、改正法は違憲である。

 

                              以上(2094字)

※「より制限的でない他に選びうる手段があるか」というのは、問題となっている立法目的を達成しうる上で、問題となっている手段よりも制限的でないもので、目的が達成できるものでなければなりません。そうすると、他にいろんな手段が思い浮かんだとしても、問題となっている手段と同程度に目的達成できなければ、LRAとして認められません。実際に他人の答案を見たわけではありませんが、LRAの意味を履き違えている方がいらっしゃるように感じましたので、念のため。

※たとえば平成28年の司法試験公法系第1問の問題のように、他に選びうる手段がかなり思いつく問題もありますが、実際にそれが有効なのか、実効性があるのか?という観点を度外視して答案を書くことはダメだということです。

【追記2020.3.14】

※LRAについては、具体的な事実を用いて主張立証するために、「より緩やかな方法で目的達成が可能である」という事実立証ではなく、「より強い規制手段が必要であることの立法事実の不存在」を根拠として憲法違反を導く判断方法があります。

違憲審査基準には、利益衡量の枠付けという機能のほかに、政府の行為理由を統制する機能、すなわち「違憲な目的をあぶり出す」機能をも有します。もっとも、ここでいう「違憲な目的」とは、目的手段審査での審査対象の「目的」とは異なります。後者の審査をpassできなかったときに初めて前者の「目的」が違憲な目的であったことが「あぶり出」されるのであった、目的審査の段階で常に、立法目的を違憲なものであるかのように解釈するのはダメです。

憲法演習ノート 13.B准教授の生活と意見とため息

 

 

第1 問1(以下、条数のみは憲法

1 本件訴訟において、A大学としてはB准教授に対する懲戒免職処分(以下、「本件処分」という)は、A大学就業規則に基づき適切な処分であったとして合憲であると主張する。

 では、このようなA大学の本件処分は「学問の自由(23条)に資するものといえるか。 

2 「学問の自由」は、真理探究活動である学問を保障することによって、個人の尊厳を図るとともに、人類社会の発展を図るものであり、要な権利であり、精神的自由権の一つにあたる。そして、A大学は、不偏不党の立場から真理を探究する場として大学を位置付けているから、このような「学問の自由」に資するため、就業規則条を定めており、就業規則に基づき本件処分を行なっているから、本件処分は「学問の自由」に資するものである。

第2 問2

1 B准教授の反論

 大学の教授その他の研究員は、その研究の結果を教授する自由を、一般の場合よりもある程度広く認められ、また大学における学問の自由を保障するため、研究者の人事、大学の施設や学生の管理について、大学の自治が認められているものの、大学の自治は、あくまで学問の自由を支えるものとして、学問の自由、とりわけ教授の研究発表の自由を優越するようなものではない。 

 そして、本件処分は大学の自治のため行われており、これによって(准)教授の研究発表の自由を制約しているといえ違憲違法であると反論する。

2 私見

 本件の争点は、B准教授の本件シンポジウムを開く自由が「学問の自由」として保障されるか。

(1)まずB准教授の反論通り、大学の自治は学問の自由を支えるものとして、学問の自由に優越するものではない。

 しかし、学問といえども、真に学問的な研究又はその結果の発表である場合には学問の自由」の核たる部分として保障される程度は重要であるが、実社会の政治的社会的活動に当たる場合は、「学問の自由」として保障される程度は低く、大学の自治が優越することもあり得る。

(2)そうすると、本件処分が適法か否かは、本件処分を行う上で規則に定めた法規違反があったといえるかどうかで決する。

 本件処分は就業規則に定められた各規定に沿って行われており、法規違反と見えるような情況は伺えない。

 また、大学の裁量としても、初めからBに懲戒免職を言い渡すのではなく、幾度に渡って注意を促して来ている。

 そうすると、A大学には法規違反といえるような行為はなく、もはや、B准教授の言い分は身勝手な自己中心的な言い分であり、理由のないもので聞くに耐えない。

 したがって、本件訴訟における原告の主張は失当であり、A大学の本件処分は適法である。

                                                           以上(1082字)

 

※今話題の准教授が主人公の問題でした。

※2018年に書いた答案ままですが、正直この答案で点数が付くかは疑問なところです。まあ手段審査を使う場面ではないでしょうから、裁量逸脱、比較考量で答案を書いていくことになるとは思うのですが、三段論法が崩れている気がするので、実際に書く際はそこが注意点ですね。

憲法演習ノート 12.ファーストライブ

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Mは本件処罰は、集会の自由(21条1項)を制約するものとして違憲違法であると主張したい。

 ライブ会場にH連合の構成員が集合することは紛れもない「集会」である。 

 そして、集会により個々の思想、意見を交換することは、自己の人格を発展させる自己実現の価値がある。また、集会に参加することは自己の思想意見を他者に示し、もって民主政の過程に参加するといういわゆる自己統治の価値をも併せ持つものであり、表現の自由の核たる部分として、保障され、その保障の程度は重大である。

 これに対して、本件条例25条3項3号による「暴力行為を誘発するおそれがある」として行われた、本件処罰により、MやH連合のメンバーは以後「集会」をするにあたって萎縮効果が生じ、自己の人格を発展させる機会そのものを奪われかねない非常に重大な制約があるといえる。 

 したがって、本件処罰が合憲といえるには、「おそれ」があるといえるためには、単に抗争に係る暴力行為を誘発する蓋然性があるといえるだけでなく、明らかに差し迫った危険が生じることが具体的に予見できる場合に限られるべきである。 

 本件では、ライブ会場にはH連合のメンバーのみしかおらず、D会のメンバーが近くにいるような事情も伺えず、明らかに差し迫った危険が生じることが具体的に予見できるとはいえない。 

さらに、いわゆる敵意ある聴衆の法理による集会の自由の規制はそもそも許されないものである。

2 したがって、本件処罰は違憲違法である。

第2 問2

1 検察官としては本件処罰は合憲であると反論する。

 本件処罰はたしかに、Mの集会の自由に制約を与えるものではあるが、集会の自由そのものを制約するのではなく、このような大多数での集会を規制するにすぎない。したがって、厳格な基準を用いるべきではなく、本件条例25条3項3号の「おそれ」があるといえるためには、抗争に係る暴力行為を誘発する蓋然性が相当程度認められか否かによって決すべきである。 

 本件では、ガールズバーの一件以降も、H連合とD会の抗争は続いておりH連合がライブ会場に大多数で集まっていると聞いて、D会のメンバーが殴り込みにくる蓋然性は相当程度認められる。

 また、敵意ある聴衆の法理は、本件のように処罰の対象となる集会の以前から抗争状態にあった敵対勢力の存在や、その敵対勢力と抗争の際に一般人に死傷者を出すような状況が過去にあったこと鑑みれば、同法理は本件には適用されない(泉佐野判例参照)。

 したがって、本件処罰は合憲である。

(1)まず、Mらの本件決起集会が「集会」の自由により保障されるのは間違いない。

 そして、本件処罰はMのみを起訴するというものであり、これはH連合のボスを起訴することによって、同連合のメンバーに萎縮効果を与えることを目的としたものと見ることができ、H連合の集会の自由そのものを規制する重大な制約であるといえる

そうすると、重要な権利・自由に対する重大な制約であることから、本件処罰の意見審査基準は厳格に見るべきである。

 したがって、原告の主張の通り、本件処罰が合憲といえるには、「おそれ」があるといえるためには、単に抗争に係る暴力行為を誘発する蓋然性があるといえるだけでなく、明らかに差し迫った現実的危険が生じることが具体的に予見できる場合に限られるべきである。 

 本件では、ライブ会場にH連合が集合することになったが、実際には決起集会を行うという目的を忘れ、アイドルのライブに狂するヲタクのファンのようになっている。

そうすると、彼らはもはやH連合のメンバーとして、ライブ会場にいるのではなく、アイドルの熱狂的なファンとしてその場にいるのである。

 したがって、本件では、抗争に発展する明らかに差し迫った現実的危険の存在が具体的に予見できるとはいえない。

 以上より、本件処罰は違憲違法である。

                     以上(1549字)

 

※思った以上にあっさりした答案になってますね笑 このくらいの方が無駄なことを書かずにいい点が付く可能性があります。

※「敵意ある聴衆の法理」は学説ですが、原告には都合がいいものなので使ってみました。

憲法演習ノート 11.弱き者、汝の名は男なり



第1 問1(以下、憲法は法令名省略)
1 まず、Aの報道の自由ならびにこれを支える取材の自由は特定秘密保持法(以下、「法」という)22条により保障されている行為に当たるから、違法性が阻却され、無罪であると主張する。
2 報道には、編集などの過程に主観的な思想・意見が入り得るから、単なる事実の表現と見るのは適切でないし、知る自由が憲法上保障されるべきことは、21条1項の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところ、報道は、国民に判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕し、実質的なものにするという性格を有するから、かかる面からも表現の自由として保障を及ぼすべきである。

 したがって、報道の自由は「表現の自由」として保障されると解する。
 そして、報道は取材・編集・発表という一連の行為からなるから、取材は報道の不可欠な前提である。そうすると、取材の自由を認めないと、報道の自由の保障は達成されない。したがって、取材の自由も「表現の自由」として保障される。
3 くわえて、一般的に表現の自由は、個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという自己実現の価値と、言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという自己統治の価値を有する重要な権利である。
 そこで、「著しく不当な方法」(法22条2項)といえるためには取材対象の人格を著しく蹂躙するような場合を指すと考える。
4 Aは密約に関する情報を得るために、Bに目を付けBの行きつけのガールズ・バーにホステスとして潜入し、Bと親密な関係になり、情を通じて密約について記した文書の写しを得た。このような取材行為は、Bに妻子がいることを知ってなされたものであるが、Bはそもそもガールズ・バーに通うような無類の女好きであり、Aのような女に特別な情を抱き、Aと肉体関係を持つに至っている。このような状況を鑑みるにBは特別な情を抱くAと肉体関係を持てたという利益、Aは穴を使って情報を得るという利益を得ており、win-winである。そうすると、およそBの人格を著しく蹂躙するような場合には当たらない。
5 したがって、Aは無罪である。
第2 問2
1 検察官の反論
 本件のAの取材行為が「著しく不当な方法」であるかどうかは、一般人の観点からその取材行為が公序良俗民法90条)に反するような方法で行われていたか否かで判断する。
 AはBに妻子がいることを知っていたにもかかわらず、本件情報を入手したい一心でBに執拗に迫り、Bと肉体関係を持つに至っている。これはAが女であることを利用して、ガールズ・バーに通うような女好きのBと肉体関係を持った上で、このような関係を利用して本件情報を得るという意図が見て取れる。そうすると、AがBを不倫状態に陥れさせているといえ、公序良俗に反するような方法で行われているといえる。
したがって、Aの取材行為は「著しく不当な方法」であり、有罪である。
2 私見
(1) 本件の争点はAの取材行為が「著しく不当な方法」であるかどうかである。
 そして、原告が主張するように、原告の報道の自由表現の自由核たる部分として保障される極めて重要な権利である。これに対して、法はその目的として国家の安全保障上の観点から、特に秘匿する必要のある情報に限り、特定秘密として保護していると考えることができる。
(2)そうすると、本件情報は北方領土の返還・放棄に関するもので、国民の関心度も高い者であると考えられる。そして、領土の返還・放棄が武力によるものでない以上は国家の安全保障上から見ても、特に秘匿する必要のある情報ともいえない。
 したがって、情報の質としてはそもそも特定秘密保持法で秘匿するような情報ではない。
 以上から、本件起訴は、誤った条文解釈に基づくもので、本件情報に法3条の適用はあり得ない。
(3)よって、本件訴訟自体は主張自体失当であり、Aは無罪である。

                                         以上


※完全に私見が飛んでますが、問題文をミスリードしたようです 実際に答案で書くなら原告の主張通り「著しく不当な方法」かを検討していくことになります。

※現在の憲法の試験問題では3者間の問題は司法試験や予備試験で出題される可能性は低いですが、もし3者間の問題が出た際に、原告でどこまで書けばいいのか難しい問題があります(原告:主張、被告:反論、私見:再反論の型で答案を書く場合)。究極的には問題演習を積めばよいのですが、解決策としては一番強めのものを再反論で書くのが答案として綺麗な流れになるのかなあと思ってたりします。

※私事ですが、ようやく中間試験も終わりゆっくりできるなあと思っていたのですが、意外と期末も近いということに気付きひいひいしてます笑 そんなこんなで久しぶりの更新になってしまいました。。

※ロー入試に関しては国立の入試も終わり、あとは早稲田の冬等が残っているという感じでしょうか。1年あっという間ですね

憲法演習ノート 10.基地のある街



第1 問1
1、 Xは健全化法143条2項及び1項により、街頭行進する自由が制約されている。したがって、同法143条2項及び1項が違憲であれば、これに基づく本件不許可処分も違憲違法となる。
2、 Xの本件自由は、街頭行進する際に貧困に苦しむ日本人に対して、豊かな生活を送る在日アメリカ人の特権的境遇を糾弾するという目的を持っている。
(1)これは、憲法(以下、法令名省略)21条1項の表現の自由により保障され、歩道行進では、上記目的を果たすのは難しく、車道を利用してこそ意味があると考えているから、本件不許可処分により、自己の見解を表明する機会自体が奪われることとなるとして、消極的表現の自由という表現の自由の核となる部分が制約されているから、重大な制約といえる。
(2)また、本件不許可処分により、車道を利用しての街頭行進をする自由が制約され、Xら在滅会の活動を著しく困難にさせるものであり、結社の自由(21条1項)の制約である。
 結社の自由は、結社をする、しないということに関して公権力に妨げられない自由のみならず、団体が団体としての意思形成を行い、その意思実現のための諸活動を公権力によって妨げられない自由をも含んでいる。そして、本件制約はこれを制約し、団体としての意思を街頭において表明する機会自体を損なわせており、重大な制約であるといえる。
3、 以上から、健全化法143条2項及び1項は消極的表現の自由及び結社の自由により保障されるXの本件自由に、重大な制約を加えているから、これが合憲であるといえるには、制約の目的が真にやむにやまれぬ政府利益のため、その手段が必要最小限度であるといえなければならない。
 健全化法は、国・地方財政の再建を立法目的とする包括的な法であり、抜本的な国・地方財政の再建のためという政府利益のため、やむにやまれぬ目的のため制定したといえなくもない。しかし、車道を利用した街頭行進が最大20万円の費用負担を必要とするのに対して、車道以外の歩道を利用した街頭行進は申請手数料(全国平均2000円)のみの徴収で済む。このように金額に大きな差を設けることは必要最小限度の手段とはいえないし、立法過程で貧困層に対する費用徴収免除措置自体は導入が見送られたが、その費用を減額する等のより制限的でない手段を取ることは可能であったといえる。
 したがって、健全化法143条2項及び1項は真にやむにやまれぬ政府利益のため、必要最小限度の手段であるとはいえず、違憲である。
4、仮に健全化法143条2項及び1項が合憲であるとしても、Xの本件自由は表現の自由の核たる部分であり、貧困層であるが故に、重い制約となっている。くわえて、在滅会の街頭行進予定ルートは、アメリカン・パレードと完全に同じものであるのに、前者の費用が約12万円で、後者の費用が約4万円であるのは、平等原則に反するし違憲との主張をする。
第2 問2
1、A県の反論について
(1)まず、Xの本件自由は表現の自由であるとしても、その内容は、「アメリカの豚は自分の国に帰れ」や「汚れたちの流れる不逞アメリカ人に神罰を」などの過激で憎悪表現であるといえる。そうすると、このような表現は消極的表現の自由として表現の自由の核たる部分として重要な保障を受けるものではなく、本件制約は表現すること自体を規制したものでもなく、また表現内容に着目した内容規制ではなく、内容中立規制である。
 そうすると、健全化法143条2項及び1項が違憲であるかどうかは、重要な公共的利益に役立つものであること及び、情報の伝達のために他の選びうる手段が開かれていることを基準に判断する。
 本件では、街頭行進に伴う警察活動費用の一部を街頭行進主催者に負担させ、警察の負担軽減に、ひいては、国及び地方公共団体の財政の再建に資するという重要な公共的利益に役立つものである。そして、街頭行進にあたって、車道を選択するか歩道を選択するかは主催者の意思によるもので、必ずしも車道で街頭行進する必要はない。そして、車道よりも歩道で街頭行進する方が遥かに費用がかからずに済む。このように、情報伝達のために他に選びうる手段は開かれている。
 したがって、健全化法143条は合憲である。
(2)また、原告の適用違憲についての主張については、健全化法144条で警察費用に関しての諸規定が定められており、警察費用の上限を設け主催者に大きな負担が掛からないように配慮されている。そして、警察費用の算定に関しては、詳細な方法が定められており、これによって算定された、アメリカン・パレードと在滅会の街頭行進の費用に差が出たことも、所轄警察署長の裁量に基づき、所定の算定方法に従って算出されたものであるから、合理的区別である。したがって、平等原則に違反しない。
2、私見
(1)法令違憲について
ア、まず、原告Xの本件自由は消極的表現の自由と結社の自由に基づくもので、両者は憲法21条1項に規定されている。
 なぜなら、そもそも、表現の自由は自己の思想・感情に基づいて、外部的行為を行うことにより、自己実現の価値及び自己統治の価値を達成するものである。そして、内心における思想は外部に表明されて初めて社会的効用を発揮する。
 そうすると、警察活動費用を負担しないことによって、Xの自由を制約することは、このような表現の自由に対する重大な制約である。
イ、しかし、これに対して、A県側は、街頭行進が予定されるC町米軍住宅地内には、在滅会の活動に対して敵対的な聴衆が多く居住しているため、安全確保のために必要とされる費用が多額になるのはやむをえないこととしている。
ウ、そうすると、本件においての違憲審査基準は、Xの自由が表現の自由として保護される重要性と、A県側の公共の福祉に資する制約であることを鑑み、あらゆる事情を総合考慮し、比較衡量をして導出し決すべきである。
 具体的には、健全化法143条2項及び1項が違憲であるかどうかは、重要な公共的利益に役立つものであること及び、情報の伝達のために他の選びうる手段が開かれていることを基準に判断する。
 本件では、健全化法の目的は国・地方財政の再建という国家の存続にかかる非常に大きく重要な公共的利益に資するもので、警察活動費用を街頭行進主催者にも負担させることである。したがって、重要な公共的利益に役立つものであるということができる。
 しかし、健全化法は「車道」利用の街頭行進についての警察費用算定手段を定めるのみで、「歩道」利用に関しては道路使用許可申請手数料のみが徴収されるだけで、貧困層が「車道」を使って街頭行進するために代替的伝達経路が開かれているものということはできない。
 また、いわゆる敵意ある聴衆の法理によって、表現の自由を端的に制約することはできないから、警察の本題文中の説明も妥当ではない。
エ、したがって、健全化法は違憲である。
(2)適用違憲について
健全化法が違憲である以上は、これに基づいてなされた本件不許可処分は違憲・違法である。

                                                                                                                                    以上(2891文字)
 
 
 
 
※本答案は、憲法の条文を「」で抜き出していないですが、この答案はスマートですね笑 答案のみを読んでいる状況ですが、問題文も読んで答案をまた書いてみたくなる内容ですね笑
 
 

事例研究憲法 第12問 労働基本権―人勧実施スト事件―

 
第1 設問1(以下、憲法は題名省略)
1 まず、Xとしては本件処分の取消訴訟行政事件訴訟法3条2項)を提起する。
2 そして、本件処分はXの「団体交渉…する権利」(28条。以下、団体行動権」という。)を侵害し、違憲違法である。以下、詳述する。
3 団体行動権とは、争議権を意味し、正当な争議行為は、国家との関係では刑罰から自由であり、使用者との関係では契約上の債務不履行責任や不法行為責任を免れる。また、28条が保障するのは「正当な」争議行為だけであるが、争議行為が正当か否かは目的と手段を基準に判断される。労働条件の維持・改善など労働者の経済的地位の向上を目的とせず、または「暴力の行使」など不当な手段を伴う争議行為は、「正当な」争議行為ではなく、したがって28条の保障の範囲には含まれない。
 本件争議行為は、暴力を伴うものではなく、「正当な」争議行為である。労働者にとって重要な権利である。
4(1)これに対して、本件処分は本件争議行為を行なったことを直接制約するもので、その内容も減給6月という懲戒処分であることから重い制約があるといえる。
(2)そうすると、このような重要な権利に対する思い制約が許されるためには厳格かつ慎重な判断がなされる必要がある。
 具体的には、本件争議行為が法37条1項の「怠業的行為」にあたるといえるような場合に限り、本件処分は許されるべきである。
(3)本件争議行為は、公務員給与の改善を目的として、事前に生徒たちに説明し、父兄からも特に非難や反発がなかったことからも、「怠業的行為」にはあたらない。
5 したがって、本件処分はXの団体行動権を侵害し、違憲違法である。
第2 設問2
1 Y県側の反論
 憲法28条が保障する「団体行動権」は、正当な争議行為のみを保障しているところ、本件争議行為は、「正当な」争議行為たりえない。 
 仮に、正当な争議行為であっても、地公法は、第29条で懲戒について定めている。この懲戒権の行使にあたっては、人事委員会の専門技術的見地ないし、政策的判断が認められ、広い裁量権の行使ができる。 
 そこで、本件処分について、裁量の逸脱濫用があった場合に限り違法であり、その判断は明らかに裁量の逸脱濫用があったといえるような場合に限られる。
 しかし、本件について、そのような事情はない。
 したがって、適法である。
 Xの本件争議行為は「団体行動権として28条により保障される。そして、労働権は労働者の権利を守る消極的作用と、積極的作用を併せ持つものであり、本件争議行為は積極的作用であるが、28条の核となる権利であり、重要な権利であり、厚く保障される。 
 これに対して、本件処分は処分庁たる人事委員によりなされた懲戒処分であり、公務員たるXらには厳しい処分であり、今後の労働権の行使を控えるような処分になりかねない。
 そうすると、強い制約があるといえる。とはいえ、処分庁の懲戒権の行使には裁量が認められる部分もある。
 そこで、本件処分が許されるかは、社会通念上著しく妥当性を欠くものであるか否かで判断する。
 本件では、争議行為がわずか1時間30分に留まるものであり、争議行為を行うにあたって、事前に生徒や父兄に説明し、非難や反発がなかったことを考慮すれば、法37条の「怠業的行為」にあたるとはいえず、法29条の懲戒事由がないにもかかわらず、懲戒処分がなされており、明らかな事実誤認、考慮不尽があるといわざるをえない。
 したがって、本件処分は違憲違法である。
 
                  以上

 ※最近、労働法を学ぶ必要があって労働争議・不当労働行為に関する事例などを考えたりするのですが、この答案を書いているときは労働者の気持ちなんて考えてませんでしたね笑