答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

事例研究憲法 第12問 労働基本権―人勧実施スト事件―

 
第1 設問1(以下、憲法は題名省略)
1 まず、Xとしては本件処分の取消訴訟行政事件訴訟法3条2項)を提起する。
2 そして、本件処分はXの「団体交渉…する権利」(28条。以下、団体行動権」という。)を侵害し、違憲違法である。以下、詳述する。
3 団体行動権とは、争議権を意味し、正当な争議行為は、国家との関係では刑罰から自由であり、使用者との関係では契約上の債務不履行責任や不法行為責任を免れる。また、28条が保障するのは「正当な」争議行為だけであるが、争議行為が正当か否かは目的と手段を基準に判断される。労働条件の維持・改善など労働者の経済的地位の向上を目的とせず、または「暴力の行使」など不当な手段を伴う争議行為は、「正当な」争議行為ではなく、したがって28条の保障の範囲には含まれない。
 本件争議行為は、暴力を伴うものではなく、「正当な」争議行為である。労働者にとって重要な権利である。
4(1)これに対して、本件処分は本件争議行為を行なったことを直接制約するもので、その内容も減給6月という懲戒処分であることから重い制約があるといえる。
(2)そうすると、このような重要な権利に対する思い制約が許されるためには厳格かつ慎重な判断がなされる必要がある。
 具体的には、本件争議行為が法37条1項の「怠業的行為」にあたるといえるような場合に限り、本件処分は許されるべきである。
(3)本件争議行為は、公務員給与の改善を目的として、事前に生徒たちに説明し、父兄からも特に非難や反発がなかったことからも、「怠業的行為」にはあたらない。
5 したがって、本件処分はXの団体行動権を侵害し、違憲違法である。
第2 設問2
1 Y県側の反論
 憲法28条が保障する「団体行動権」は、正当な争議行為のみを保障しているところ、本件争議行為は、「正当な」争議行為たりえない。 
 仮に、正当な争議行為であっても、地公法は、第29条で懲戒について定めている。この懲戒権の行使にあたっては、人事委員会の専門技術的見地ないし、政策的判断が認められ、広い裁量権の行使ができる。 
 そこで、本件処分について、裁量の逸脱濫用があった場合に限り違法であり、その判断は明らかに裁量の逸脱濫用があったといえるような場合に限られる。
 しかし、本件について、そのような事情はない。
 したがって、適法である。
 Xの本件争議行為は「団体行動権として28条により保障される。そして、労働権は労働者の権利を守る消極的作用と、積極的作用を併せ持つものであり、本件争議行為は積極的作用であるが、28条の核となる権利であり、重要な権利であり、厚く保障される。 
 これに対して、本件処分は処分庁たる人事委員によりなされた懲戒処分であり、公務員たるXらには厳しい処分であり、今後の労働権の行使を控えるような処分になりかねない。
 そうすると、強い制約があるといえる。とはいえ、処分庁の懲戒権の行使には裁量が認められる部分もある。
 そこで、本件処分が許されるかは、社会通念上著しく妥当性を欠くものであるか否かで判断する。
 本件では、争議行為がわずか1時間30分に留まるものであり、争議行為を行うにあたって、事前に生徒や父兄に説明し、非難や反発がなかったことを考慮すれば、法37条の「怠業的行為」にあたるとはいえず、法29条の懲戒事由がないにもかかわらず、懲戒処分がなされており、明らかな事実誤認、考慮不尽があるといわざるをえない。
 したがって、本件処分は違憲違法である。
 
                  以上

 ※最近、労働法を学ぶ必要があって労働争議・不当労働行為に関する事例などを考えたりするのですが、この答案を書いているときは労働者の気持ちなんて考えてませんでしたね笑