答案作成の節約法と法律解釈の仕方

現在は憲法の答案例を主にあげているブログです。

憲法演習ノート 5.見ないで⁉︎

 

 

第1 問1(以下、憲法は法令名省略)

1 当該カメラによるモニタリングおよび録画がそれぞれプライバシー権を侵害し人格権に基づく妨害排除請求として、当該カメラの撤去を求める。

(1)まず、ルイが住んでいるマンションの目の前にあり、ルイやその他住人の出入りがカメラによって撮影されている。 

 このような撮影は、常時モニタリングされており、HDに録画後、1週間は保存される。これは、ルイのみだりに容貌・姿態を撮影されない自由を侵害し、許されないとし、13条後段に制約を加え、違憲違法であると主張する。

(2)そして、このようなルイの自由が13条後段によって保障されるかについては、直接保障する明文規定はないものの、憲法は個人の人格的生存に不可欠な権利を保障しているから、このような権利であれば、幸福追求権の一環として13条後段によって保障されると解するべきである。そして、私的領域を侵害されないことは平穏な生活をするために欠かせない利益であり、かかる権利の保障は人格的生存に不可欠といえるから個人の私生活上の権利として、みだりに容貌・姿態を撮影されない自由は憲法上保障されているといえる。 

 また、その要件として、①私生活上の事実又は事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること(私事性)、一般人の感受性を基準として当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること(秘匿性)、③一般の人々にいまだ知られていない事柄であること(非公然性)が必要であると解する。

(3)本件の依頼人たるルイは彼氏の1人であるタカヒロと仲睦まじく腕を組んで帰宅する姿が、もう1人の彼氏である警察官のアツシに見られている。これは個人が誰と交際するか、その決定は個人の自己決定権に基づき、相手方との意思疎通を経て、男女の交際がスタートする者であり、これは私事性が非常に高いものである(①充足)そして、このような誰と交際するか、ルイのようにうら若き美女にとっては引く手数多であろう状況があったとしても、一方の彼氏と腕を組んで帰宅しているところを、もう一方の彼氏に見られることは望まないし、一般人の感受性を基準にしてもこのような事実を公開することは望まない(②充足)。さらに、一般人のルイが誰と交際しているかは非公然性があるといえる(③充足)。 

2 したがって、ルイのみだりに容貌・姿態を撮影されない自由は、人格的生存に不可欠であり、私生活上の権利であるから、13条後段によって保障されるといえる。

第2 問2

1 これに対するA県の反論としては、たしかにルイのみだりに容貌・姿態を撮影されない自由は判例も認めているところであり、13条後段で認められる。

 しかし、13条後段によって保障される権利・自由であっても、「公共の福祉」(12条、13条)による制約を受忍しなければならない場合がある。

 そして、本件撮影の問題となるカメラが設置されている場所は、N三丁目というA県屈指の歓楽街で、治安が悪い所の公道に設置され、あくまでルイの自宅前の歩道に向けられており、このような公道上を撮影しているカメラに写ったルイの要望・姿態は、居室内の撮影をされす場合などの私的領域と異なり、プライバシーによって保障される程度は低い。

 したがって、ルイの自由よりも、「公共の福祉」が優越し、違憲ではないと反論する。

2 以上に基づき、以下で私見を詳述する。

(1)たしかに、ルイのみだりに容貌・姿態を撮影されない自由は、人格的生存に必要不可欠で 

私生活上の自由であるとして、13条後段による保障を受けることは間違いない。

 しかし、被告の反論でも言及があったとおり、13条後段により保障される権利・自由であっても、「公共の福祉」による制約を受忍せばるをえない場合がある。

(2)そこで、本件カメラ撮影が合憲か否かは、ルイのみだりに容貌・姿態を撮影されない自由と、これを制約することによって得られる公共の福祉の利益を比較衡量して決すべきである。 

(3)本件で13条後段により保障されるルイの自由は、ルイが自宅の出入りをする姿を撮影されない自由、さらに言えば、ルイがタカヒロと仲睦まじく腕を組んで帰宅する姿を、タカヒロ見られない自由であり、これは、自宅の出入りとはいえ、あくまで公道上の撮影を目的に撮影していたカメラに偶然写ったものであり、プライバシーの権利の一環とはいえ、その内容は居室内のプライバシーと比べて一歩後退せざるを得ないといえる。したがって、必ずしも、ルイの自由の要保護性高いとは言えない。 

 次に、公共の福祉に関しては、N三丁目というA県屈指の歓楽街治安の悪い場所であり、刑法犯罪や凶悪犯が数多く認知されている。そうすると、捜査機関としても、設置されたカメラに現行犯が写っていれば、操作を進めていく上で有力な手掛かりであり、訴訟上でも物的証拠として提出することが可能である。さらに、撮影された映像は、常時モニタリングされるとはいえ、1週間後には自動で新たな映像が上書き保存されることによって消滅する。

 そして、このような撮影をすることによって、ある程度重大犯罪の抑止力になれば、周辺住民の安心に繋がり、公共の福祉に資するものであるということができる。

3 以上の事情を比較衡量した結果、公共の福祉がルイの本件自由よりも優越し、当該カメラによるモニタリングおよび録画は合憲である。

 

以上

 

※人格的生存に必要不可欠ってなにをいうのか。そもそも人格的生存に必要不可欠というワードは予備校が勧めるものであります。答案作成の現場ではあまり難しいことは考えなくてもいいかもしれません。

※「新しい人権」について、詳しく知りたい方は、宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開』【第2版】(日本評論社、2014年)14頁以下を参照してみてください。