答案作成の節約法と法律解釈の仕方

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憲法演習ノート 16.車を借りると生活保護は廃止❔

 

 

第1問1(以下、憲法は法令名省略)

1 Xの主張について、Bの保護廃止決定(以下、「本件決定」という)が生活保護法4条1項の適用を誤って適用し、これに基づいてなされ、Xの生存権(25条1項)を侵害し違憲であると主張する。

(1) まず、Xは夫と離婚した後に、Xと4人の子どもの生活を支えるため、パートに出ているがとても世帯を支えることは困難であり、生活保護を受けていた。

 生存権は、法律による具体化を待って初めて裁判規範たり得る抽象的権利であるが、生活保護法は1条において目的を定め、国民に対して生存権を保障する25条1項の趣旨を具体化したものといえるから、同法生存権の具体化立法といえる。したがって、同法の定める生活保護を受ける権利は、生存権の一環として保障される。

(2) また、生存権は、まさに「生きる権利」そのものであるから、司法による特別の保護が必要である。さらに、生活保護は、生活が困窮した者に最低限度の生活を保障するための制度であり、重要な意味を持つ。

 したがって、①考慮すべき事項を考慮に入れず、考慮すべきでない事項を考慮し、又は③さほど重視すべきではない事項に過大に比重を置いた判断がなされた等、立法裁量の行使に逸脱・濫用がある場合には生存権の侵害が認められると解すべきである。

(3) 本問では、Xは職を転々としており、持病も有しているから、自動車での移動もやむを得ないものであるのに対して、このようなさほど重視すべきでない事項を過大に比重を置いて判断がなされているといえ、裁量の逸脱・濫用がある。

(4) したがって、本件決定は生存権を侵害し違憲である。

2 これに対して、Y市としては、生存権の具体化立法について、立法府広範な裁量を有しているしたがって、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用があると見ざるを得ないような場合に限り生存権を侵害すると解するべきである。

 本問では、生活保護法4条1項の行政解釈に基づいてなされた決定であるから、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用があるとはいえない。

 したがって、本件決定は合憲である。

3 以上に基づき私見を述べる。

(1)まず、25条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきであるとともに、当該規定を現実の立法として具体化するにあたっては、国の財政事情を無視することはできず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門的技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。

 したがって、25条1項の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択的決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠きらかに裁量の逸脱・濫用があったと見ざるを得ないような場合に限り、生存権の侵害があった解するべきである。

 本問では、生活保護法は、25条1項の規定の趣旨を実現する目的を持ってせっていされた社会保障法上の制度であり、それぞれ所定の事由に該当する者に対して生活保護を支給すること内容とする。しかし、生活保護法4条1項の「その利用し得る資産」に自動車の使用、さらに借用についてまでを含めることは著しく合理性を欠いているといえ、行き過ぎた規制であり、裁量の逸脱・濫用が明らかである。

 したがって、本件決定は違憲である。

第2 問2

1 Xの主張については、第1の1と同様。

2 これに対してY市としては、外国人であるXが生存権侵害を理由とした本件決定の違憲性を主張することはできない。なぜなら参考資料3で、「外国人に対する保護は、これを法律上の権利として保障したものではなく、単に一方的な行政措置によって行なっているものである。従って生活に困窮する外国人は法を準用した措置により利益を受ける」のみであるからである。したがって、本件決定により不利益を受けたとしても、不利益を受けないことまでをも憲法は保障するものではない。

 よって、本件決定は合憲である。

3 外国人の人権について、権利の性質上日本国民にのみ保障を認めるものを除いては、外国人にも保障が及ぶと解する生存権は、抽象的・相対的な権利であり、これが外国人に及ぶかは、生存権内容を具体化した法律によって決すべきである。そして、参考資料3において「生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて…必要と認める保護を行うこと」ができるとしている。

 したがって、被告の反論は妥当しない。

そして、生活保護を行うかは、立法府の広い裁量が及ぶものの、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用がある場合には違憲であると解する。

 本問では、Xが4人もの子どもを抱えており生計を立てるのに困難であるということや、Xが持病を持っており、電車やバスによる通勤が困難であることよりも、自動車を使用していること自体に比重を置いて判断を行なっているといえ、比例原則に反する。そうすると、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用がある。

 したがって、本件決定は生存権を侵害し、違憲である。

 

           以上(2165字)

 

※この問題は生存権の話をしなければ、そのまま行政法にも使える問題で、実際に生活保護受給者への、生活保護の決定の取消しに関する問題は結構あるような気がします。

※この前、自主ゼミで新司法試験の憲法を解いたのですが、法令違憲適用違憲を2つ書かないといけない問題があって死にそうになりました笑 このままでは到底試験には受からないので、もっと鍛錬が必要なようです・・・。